本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、日本HPの岡隆史 取締役副社長執行役員と、レッドハットの古舘正清 執行役員の発言を紹介する。
「PC対タブレットという議論に意味はない」
(日本HP 岡隆史 取締役副社長執行役員)
日本ヒューレット・パッカード(HP)が5月27日、安定した接続を実現する800MHz帯対応の通信モジュールを内蔵した「Windows 8」搭載ビジネスタブレット「HP ElitePad 900」LTEデータ通信モジュール搭載モデルを発表した。
日本HP 取締役 副社長 執行役員 岡隆史氏
同社取締役副社長執行役員でプリンティング・パーソナルシステムズ事業を統括する岡氏の冒頭の発言は、その発表会見で、PCとタブレットの関係について述べたものである。
新製品は、既存のWindows資産の活用、セキュリティや管理、運用面からの導入の容易さといった従来のElitePad 900が持つメリットに加え、ビジネスの機動力を高める高速通信に対応することにより、外出先や移動中にインターネットを快適に利用できるようにしたのが特徴だという。
機種としては、KDDIのLTE回線「au 4G LTE」に対応した「HP ElitePad 900 for au」と、NTTドコモのLTE回線「Xi(クロッシィ)」に対応した「HP ElitePad 900 for DOCOMO」を用意。これら新製品の詳しい内容については、すでに報道されているので関連記事をご覧いただくとして、ここでは岡氏の冒頭の発言の真意に迫ってみたい。
岡氏は会見の冒頭で、国内PC市場の動向についてIDCによる2016年までの出荷台数の予測を基にしながら、「従来のPCは横ばいで推移するとみられるが、タブレットは高い伸びが期待できる。PCとしても使えるタブレットは、まさしくPC市場の新たな主戦場となる」との見方を示した。
ちなみに、タブレットだけでは2013年におよそ600万台の出荷が見込まれる国内市場で、その2~3割程度がビジネス用途になるというのが同氏の見立てだ。
ただ、ビジネス向けであれコンシューマー向けであれ、PCとタブレットの関係については業界内でも根強い懸念がある。それは、タブレットはPCメーカーにとって新たな市場を切り開く一方で、既存のノートPC市場を侵食する“諸刃の剣”になるのではないかというものだ。そうなると、タブレットとノートPCの単価の違いから、PCビジネスそのものが縮小する事態に陥りかねない。
そうした懸念について、会見の質疑応答で岡氏に問うてみたところ、まず返ってきたのが冒頭のコメントだった。そしてこんな見解を示した。