好みは個人的なものであり、ユーザーのタイプによって、魅力を感じるディストリビューションの種類も違うものだ。ユーザーの意見に影響を与える変数が多すぎて、「ユーザーXにもっとも向いているのはディストリビューションAだ」と断言するのは難しい。しかし、エンタープライズコンピューティングの世界では、物事はもう少しわかりやすくなりつつある。この分野では、いくつかのディストリビューションが目立つ存在になりつつあるからだ。
この記事では、私が選んだ大企業に適したディストリビューションのリストを説明する。このリストは販売数に基づくものでも、Distrowatchに基づくものでも、マーケティングの売り文句に基づくものでもない。このリストはすべて経験に基づいたものであり、今後どういったものが主流になるかについての(願わくば)健全な洞察に基づくものだ。また、この記事では、機能リストの比較をするつもりはない。その理由は、Linuxはオープンソースであるため、欲しい機能があれば必要に応じて組み込むことが可能だからだ。商用のオープンでない機能でさえ、いずれはリバースエンジアリングの対象となる。
この記事ではサーバとデスクトップの両方を扱う。まず、サーバについて考えてみよう。
サーバに最適なディストリビューション
ここではエンタープライズレベルのニーズについて考えていることから、費用は大きな問題ではないと仮定しよう。この場合、エンタープライズサーバ用のディストリビューションとして最善の選択は、文句なしに「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」だろう。その理由は、RHELが多くの大企業のニーズを満たしているからだ。実際、RHELは大企業にとって必要不可欠な存在だ。必要なのはRed Hatのアプリケーションスタックを調べることだけであり、これは非常に分かりやすいものになっている。Javaベースのアプリケーションの提供やその他のクラウドべースのソリューションで使える、ミドルウェアソリューションであるJBoss Application Serverのようなツールが用意されているため、柔軟かつ強力なプラットフォームとして利用できる。
しかしソフトウェア以上に重要なのは(オープンソースであるため、ソフトウェアは誰でも再創造することができる)Red Hatが築いてきたパートナーシップだろう。これを見れば、Red Hatが企業の考え方を理解していることがわかる。AMD、Cisco、Dell、富士通、HP、IBM、Intelといった名前に何か思うところはないだろうか?さらに、サポートも重要だ。Red Hatはまた、サポートとして数多くのリソースを提供しており、これには大量のオープンソースライブラリが含まれる。
適する用途
- クラウドプラットフォーム
- 仮想化
- 高可用性クラスタ
Red Hatに次ぐエンタープライズレベルのサーバ用ディストリビューションは、「SUSE Linux Enterprise Server」(SLES)だろう。SLESはRed Hatと同じくらいしっかりしているが、ややスケールが小さい。確かに、SLESはエンタープライズ環境でサーバに必要とされる仕事を処理できるが、SUSEはRed Hatほどは評判も市場シェアも獲得しておらず、未来も不確かだ。
適する用途
- 仮想化
- ファイアウォール
- ファイルサーバ