三国大洋のスクラップブック

iOS 7異説:「素人くさいアイコンをデザインしたのはだれ?」

三国大洋

2013-06-18 17:49

 先頃発表されたAppleの「iOS 7」について、ちょっと面白い話を目にしたので、簡単に紹介してみたい。




[Official Apple iOS 7 Promo video - Jony Ive explains iOS 7]

 The Next Web(TNW)というIT系のブログに、「iOS 7が(iOS 6)とあれほど違ってみえるのはなぜ?」というタイトルの記事が出ていた(註1)。この記事の中に「新しいアイコンの多くは、Apple社内の主にマーケティングやコミュニケーション担当部門のメンバーがデザインした」という一文があるのをみて、「なるほど」と思わず膝を打ってしまった。膝を打ってしまったのは、その少し前にiOSの新しいデザインを酷評したThe Vergeの記事(註2)などを目にしていたからだが、その批判についてはいったん脇に置くことにしたい。

 このTNW記事によると、2012年11月からUI(を含む、Human Interaction)全般を見ることになったJony Iveは、社内で印刷物やウェブマーケティング関連の仕事をしているデザインチームのメンバーの力を借りて、iOS 7のルックスやアイコン用のカラーパレットを決めた後、その結果をiOSのアプリ・デザインチームに持って行き、「内側」をデザインさせたらしい(註3)。「内側」については"interior"としか記されていないが、おそらくアプリを選択し、立ち上げてからの各画面や要素のことと思われる。

 The New York Times(NYTimes)のBitsブログ(註4)で紹介されていた、Sebstiaan de Withという人物のツィートには「これ(iOS 7のデザイン)はグラフィック・デザイナーの手になるもの。インタラクション(操作)の手がかりも見つかりづらく、アイコンのつくりは極めてお粗末で、タイボグラフィーはHelveticaの使い過ぎ」という指摘(註5)があるが、この指摘と上記のTNWの話の内容とは妙に辻褄が合う。

 また、日向(ひなた)での視認性の悪さを指摘した別のツィート(註6)も紹介されているが、こちらの発言者はTwitterで主席デザイナー(Principal Designer)として働くJohn Brewerという人物だという。いずれにしても、その筋の玄人がみれば一目で「素人の仕業」とわかる代物、ということだろうか(パッケージや印刷物といったいわゆる「紙」のデザイン、あるいはパソコンモニターでの表示が中心と思われるウェブデザインの専門家を、「モバイルOS・アプリのデザインについては素人」と言い切ってしまうことには抵抗があるが、それでもやはり「勘所の押さえ方」のような部分で大きな違いが出そうなことは想像がつく)。

 長らくiOS開発部門を(半ば自治領のような形で)取り仕切ってきたとされるScott Forstall(スコット・フォーストル)の失脚が2012年の10月末。そこから数えて、多めに見積もっても約7カ月強という短期間で、ここまで大きな変更を形にしてきたJony Ive。今回の基調講演でだいぶ評判を上げたCraig Federighi(ソフトウェア・エンジニアリングの責任者:註7)との二人三脚であったにしても大したもの――まして、長い間15人~20人程度の小さなチームで仕事をしてきたとされるIveが、それまでほとんど交流のなかったiOS開発チームとの間で信頼の基盤をつくるだけでも、それなりの時間がかかりそうなことは比較的簡単に想像できる・・・・・・などと私には思えるが、いずれにしてもそんなIveの苦労がしのばれるような話といえるかもしれない。

[New Frontman for Apple Is Emerging - WSJ]

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