前回記事「新型iPhone発表--事情通も読み違った「iPhone 5c」の位置づけなど」に続いて新しいiPhoneの話。先週の発表後に「新興国市場を想定した手頃な価格の新型iPhone」が出なかったという話題がさまざまなニュースサイトや株式市場などを賑わせていたが、実は「中古iPhoneこそがAppleの用意した『隠し球』であり、当面は新興市場向けの『真打ち』なのではないか、といったことについて考えてみる。
前回の終わりに、「Appleは新しいビジネスモデルを見つけ出す必要がある」などと書いたが、実はあの時にXiaomi(「小米」「シャオミ」などと表記されることも)という中国の新興スマートフォンメーカーのことが念頭にあった。Xiaomiについては、8月下旬にHugo BarraというGoogleのAndroid部門中核幹部が移籍して、だいぶ大きな注目を集めていた。すでにご存じの方も多いかもしれない。
[Smartphone Maker Xiaomi Takes on Apple in China - Bloomberg]
このBloombergの動画にあるように、Xiaomiには熱狂的なファンが付いていることなどから「中国版Apple」と評されることも多いらしいが、創業者らは「ビジネスモデルはAppleよりもむしろAmazonに近い」などと主張している。そんなニュースがしばらく前から目立つようになっている。
このビジネスモデルについては、ミドルクラスのAndroidスマートフォンをほぼ原価で販売し(オンライン直販だから余計な販管費がかからない)、ケースやバッテリといったアクセサリ類の販売や、端末からのeコマースなどで利益を上げる、というもの。たしかにAmazonのKindle Fireの売り方に似ている。
スマートフォン本体の人気――4~6月期には中国国内でのメーカー別出荷台数でAppleを抜いていた――に加えて、こうした付帯売り上げも貢献し、Xiaomiは創業から3年余りで黒字化達成、2013年上期の売り上げは前年比2倍以上の132億元(約21億6000万ドル)に達し、通年では280億元と2012年の126億ドルを大きく上回る見通し。またスマートフォンの販売台数も年間2000万台と前年の約720万台から3倍弱の増加が予想され、さらに8月には100億ドルの評価額で増資したとか、9月初めには新たに47インチの3D対応スマートテレビを2999元 (約490)で販売することにしたなど、このところ勢いを感じさせる話が矢継ぎ早に出てきている。
そんなXiaomiの最新機種「MI3」は価格が1999元(約330ドル、16Gバイト版の場合)。ハイスペックにもかかわらず、この値段で販売されるというのが、先週「iPhone 5c」の発表時に出ていたいくつかの記事でも引き合いに出されていた。新しいiPhone、特に「5c」の値段の高さを強調するための比較例として、という扱い方が多かったように思う。
さて。今回の新型iPhone発表に向けて、外野からAppleに出されていた「課題」あるいは「疑問」を整理すると次の3つになるかと思う。
- 最上位機種にどんな魅力(差別化の材料)を付加してくるか
- 米国などの予算に敏感な消費者層をどう取り込むか
- 中国などの大衆層にどうアプローチするか
このうち2番目と3番目の点は、割と一緒にされて語られてきていた、と今から思えばそう感じられる。「廉価版iPhone」あるいは「400ドル程度で販売される新機種」の待望論につながったのが、この2つであることは言うまでもない。だが、この区分自体が混乱を招いていた部分もあるというのがだんだん分かってきた。実際には、iPhoneを売る際に相手に「信用を付与できる」環境があるか否かで分けて考えたほうがわかりやすい、ということに気付いた次第である。