果たしてOTTはキャリアが敵視すべき存在なのだろうか?
例えばSkypeが無料音声サービスを始めたとき、およそすべてのキャリアが戦々恐々とした。だが、だからといって多くの利用者がSkypeに乗り換えたかというとそんなことはない。あまたのOTTプレイヤーがSkypeのようにVoIPサービスを提供しているが、それでOTTが莫大な利益を上げているという話は聞いたことがない。各社とも公開はしていないが、OTTのVoIPサービスは利益を上げられていないのである。
それにユーザーの立場として考えたとき、大事な通話や業務上の機密の通話を行う際は、今でもキャリアの電話サービスを利用している。キャリアはOTTに対し、音声通信領域では目くじらを立てていないと言えるであろう。
SMS(ショートメッセージサービス)については、OTTへの乗り換えが進んだことは事実である。とはいえ、SMSがキャリアのコアビジネスであったかというと、そういうことでもない。
i-modeに代表されるキャリアのアプリケーションコンテンツサービスは莫大な利益をもたらした。ユーザーに有料でアプリケーション・コンテンツを売り、アプリケーションコンテンツプロバイダからはユーザー代金徴収などの名目で手数料収入が入ってきたのである。これを壊してしまったのがOTTである。アプリケーション・コンテンツの多くを無料で提供し始めたのである。
これによりOTTはキャリアのトラの尾を踏んだのである。
OTTはキャリアに代わり多くの利益を上げて喜んでいるのだろうか。前述のとおり、OTTは無料のアプリケーション・コンテンツを提供することで多くのユーザーを獲得している。しかしながら無料でサービスを提供しているため、なんらかの収入源を他に見出さなければならない。
多くの場合は広告である。この場合、とにかく利用者の数が多いことが大切である。タダのアプリケーション・コンテンツで利用者を増やして、広告収入で食いつなぎ、本質的な収益化はあとから考える、というのが多くのOTTの動き方なのである。