それでも小浜会長、藤田元宏社長、そしてソーコミのメンバーは、抵抗や無反応にひるむことなく、粘り強く丁寧に歩を進めていった 。社内キーマンとの対話、クチコミや社員満足度調査、ソーシャルメディアの啓蒙活動、カスミFacebookページの立ち上げ、社内外でのFacebookコミュニティ活用。そして2013年度からの新中期経営計画では、その骨子を「ソーシャルシフトの経営」とし、今後3年間かけた全社改革を社内外にむけて宣言した。

この図は、2013年のソーシャルシフト施策をまとめたものだ。全社で経営哲学を共有し、社員が自律的に行動することで、最高の顧客経験価値を提供する。それが結果的に事業成果につながるという「インサイドアウト」の考え方を社内に浸透させる。そのために、キーとなる3つの組織が新設された。
1つは、全社員で共有すべき価値観を考える「未来委員会」、その価値観にそって自律的な店舗運営をおこなう「モデル店舗」、モデル店舗の運営を支援する本社会議体「ソーシャルシフト・コミッティ」だ。
未来委員会は各部門から選ばれた約20人の若手社員で構成された。オンラインとオフラインで交流しながら、カスミのあるべき姿、共有すべき「価値観」を創りあげてゆく。その成果はモデル店舗で「行動の動機とすべき考え方」として運用され、現場の意見を交えながらブラッシュアップする予定だ。
明文化された「価値観」を社内に浸透させていくのも未来委員会の大切な役割だ。広報、情報システム、人事教育などとも連携し、現場で「価値観」を実践するエバンジェリストとなってゆくことが彼らには期待されている。

未来委員会の様子
モデル店舗は、ソーシャルシフトが目指す「自律的組織」を先行して実践するための、いわば特区的組織だ。藤田社長自身が147ある全店舗に問い掛け、立候補した10店をモデル店舗としてスタートさせた。「お客様も社員も笑顔に溢れ、最高の顧客サービスを提供し、各地域で特別なスーパーと感じていただけるお店づくり」を目指しているが、その具体的な施策は店舗の自主性に任されている。
実際にモデル店舗がどのように進捗しているか、クローズアップ現代でも取り上げられた「フードスクエア越谷ツインシティ店」の生き生きとした店内風景をご覧頂きたい。スタートしてわずか半年足らずだが、モデル店舗の業績は全店舗平均を上回る成果をあげつつある。
[モデル店舗の動画]