前回は、電機大手8社の2012年度(2012年4月~2013年3月)業績を振り返った。今回と次回は、2013年度第1四半期(2013年4~6月)業績を個別により細かく見る。
今回は、日立製作所、パナソニック、ソニー、東芝の4社を取り上げる。
(各社資料をもとに作成)
不採算プロジェクトが課題の日立製作所
電機大手8社の中で最大の売上規模を誇る日立製作所は唯一、売上高で前年割れの実績となった。
日立製作所 代表執行役 執行役副社長 中村豊明氏
連結売上高は前年同期比1.8%減の2兆829億円、営業利益は同12.7%減の554億円、税引前利益は同13.4%増の553億円、当期純利益は同54.0%増の107億円。「電子システム、建設機械、電子装置・システム部門などが前年同期を下回ったのが原因」(日立製作所 代表執行役 執行役副社長 中村豊明氏)とする。
だが、同社の業績で特筆しておきたいのは、最終利益で15四半期連続で黒字を計上した点だ。2012年度を最終年度とする「2012中期経営計画」では、最終損益で年間2000億円台の安定的確保、営業利益率で5%超を目指していたが、「安定的に黒字を計上できる体質を作ることができたと認識している」(中村氏)と胸を張る。
課題といえるのが、情報・通信システム部門での不採算案件プロジェクトの業績への影響。情報・通信システム部門の売上高は、前年同期比3%増の5305億円、営業利益は前年同期から16億円減の32億円となった。
「性能対策に取り組んでいる不採算案件プロジェクトが継続しており、これに関するコストが予定よりも増えている。その部分が上期業績にも影響する。第3四半期(10~12月)から第4四半期(2014年1~3月)に検収を迎える予定だ」などとした。
改善するも赤字のパナソニックのテレビ
パナソニックは、売上高は前年同期比0.6%増の1兆8245億円、営業利益は66.3%増の642億円、税引前利益は224.2%増の1226億円、当期利益は前年同期の8.4倍となる1078億円となった。
同社で注目されるのは、やはりテレビ事業の業績改善。テレビ事業を含むAVCネットワークスの売上高は前年同期比10%減の3605億円、営業損失は3億円悪化の167億円の赤字。より現実的な指標として発表している製販連結では、売上高は前年同期比7%減の4053億円、営業損失は14億円改善したものの、176億円の赤字となった。
テレビの販売台数は、パネルを含めて前年同期比約10%減の272万台。そのうちプラズマテレビは32万台、液晶テレビが240万台となった。テレビ・パネル事業の連結収益は、77億円改善したものの、115億円の赤字が残る。また、テレビ事業部の売上高は前年同期比9%減の879億円、営業損失は10億円悪化の6億円の赤字となり、依然として赤字が残っていることを示す結果となった。
パナソニック 常務取締役 河井英明
パナソニック 常務取締役 河井英明氏は「デジカメや携帯電話などのBtoC製品が需要低迷と不採算機種の絞り込みで販売数量が減少したが、パネル事業は着実に改善しており、赤字幅は縮小している」とし、赤字脱却に向けて順調に進捗していることを強調してみせた。
テレビのスマートVIERAのマイホーム機能の搭載を発端として、民放各局がテレビCM放映を見送ったことに関する影響については「業績への影響は軽微であり、ほとんどなかったと判断している」と語ったのも興味深い。
手放しで評価できないソニーのエレクトロニクス事業
ソニーは、売上高は前年同期比13.0%増の1兆7127億円、営業利益は前年同期の5.9倍となる363億円、税引前利益は約5倍の462億円、当期純利益は前年同期の246億円の赤字から34億円の黒字となった。