モバイル機器市場での競争が激化するなか、IT企業は将来的利益のための選択肢を模索し始めている。これにはウェアラブルテクノロジや拡張現実(AR)の可能性も含まれている。
携帯用デバイスは、それが腕時計であるかヘッドセットであるかにかかわらず、体に装着できるようにすることで、デバイスの対話性を向上させられるようになる。Appleやサムスンはいずれもスマートウォッチを開発中であるとうわさされており、一方「Google Glass」は、装着者の視界に情報を表示するだけにとどまらない対話性を実現した最も顕著な例の1つとなっている。
次は何が来るのだろうか?Investor's Business Dailyが考察しているように、おそらくは拡張現実だろう。拡張現実とはモバイル機器やヘッドギア、眼鏡の使用によってユーザーの環境を事実上拡張するというものだ。これはモバイルアプリと、どこからでもインターネットに接続できるという状況を組み合わせ、一歩先に進めたものと言える。
調査会社GartnerのアナリストTuong Nguyen氏は「ユーザーは電話をかけているかどうか、カメラのファインダーをのぞき込んでいるか、眼鏡をかけているかどうかに関係なく、もう1組の目を持つことになる--ユーザーは見ている対象のコンテンツや場所、対象そのもののイメージに基づいた関連情報を目にするのだ」と述べている。
コンシューマー向けやビジネス向けの拡張現実の研究開発はまだ始まったばかりだが、Hewlett-Packard(HP)やQualcomm、キヤノン、Googleなどの企業はこの分野に精力的に取り組もうとしている。HPとQualcommはマーケティングキャンペーンの価値を高めるためのモバイル機器向け画像認識ソフトウェアを開発している。一方キヤノンは、左右の目それぞれの近くに配置されたデジタルカメラによって撮影した映像に仮想イメージを重ね合わせるようにするヘッドマウント型の拡張現実プラットフォームを開発している。また、Google Glassは拡張現実を念頭に置いて作られた機器ではないが、開発者らは2013年中に予定されている同製品の一般発売に先立って拡張現実というコンセプトを追求しているところだ。
AudiやThe Walt Disney Company、Leap Motionは既に拡張現実テクノロジを用いた応用事例を開発しており、まだまだこのトレンドは続いていきそうだ。
他の企業も、将来的に数十億ドル規模になる可能性のあるこの市場の可能性を探求している。例えば、Infinity ARはデジタル眼鏡やスマートフォン、タブレットを用いた拡張現実プラットフォームを開発するという目標のもと、イスラエルのテルアビブに研究開発センターを設置している。
調査会社IDCのアナリストJohn Jackson氏は以下のような意見を述べている。
この分野は現在、ゴールドラッシュ時代の様相を呈しており、誰が頭角を現すかを予測するのは難しい。この分野は、さまざまなテクノロジを活用し、それらをマッシュアップすることで、ユーザーを取り巻く世界とのやり取りに革命をもたらす新たな方法を提供するプラットフォームであると考える必要がある。