三国大洋のスクラップブック

ノキア事業買収への反応とMSの次期CEOに求められる資質

三国大洋

2013-09-05 12:11

 MicrosoftによるNokiaの端末&サービス事業買収の第一報が出てからまる1日が経った。

 その後、フィンランドのNokia本社で、Steve BallmerやStephen Elopらによる報道向けの発表も行われ、ウェブ上はこの話題で持ちきり、といった感がある(ふだんから利用しているTechmemeなどをみていると「Steve Jobsが亡くなったとき以来ではないか」といっても言い過ぎでないほどたくさんの記事やブログのコラムが出ているのが分かる)。

 これらにすべて目を通すのはしょせん無理な話で、これから記すのはかなり偏った見方になるかと思うが、それでも気になった点、印象に残った点などをいくつか書き出してみることにする。

株式市場の反応

 いろんな見方や意見を見ていく前に、まずは株式市場の反応。下記の通り、Nokiaの株価が30%以上も急騰(発表直後には、一時40%以上値上がりしていた場面も)、一方でMicrosoft株価終値は4.55%の下落。他の大手IT株が「ほぼ横ばい~わずかに値上がり」といったなかでこのマイナス4.55%というのは、市場のネガティブな反応をはっきり示すものといえようか。

Nokia株価の動き
Nokia株価の動き
Microsoft株価の動き
Microsoft株価の動き
9月3日の関連他社の株価終値
9月3日の関連他社の株価終値

「投資ファンドには相談なし」で一波乱の予兆

 Microsoftは、今回の買収に関して、取締役会の議席獲得がほぼ確実視されている投資ファンドValueActに、話を通していなかったというニュースが出ている。「適切な守秘義務契約も(交わしてい)ない相手に対して、企業がそのような非公開の情報を開示することはない」というMicrosoft法務責任者Brad Smithの説明を読むと、手続き的には正しい、あるいはやむを得ない判断といえるかもしれない。ただ、ValueActなど一部の株主がエンタープライズ分野への注力とコンシューマー向け事業(ハードウェアや検索など)の縮小もしくは撤退を求めている、というのは以前の記事に記したとおり。一方では、Nokiaとの合意がほぼできていながら、一方ではそれ(買収)に反対しそうな相手と手を結ぶというMicrosoftの動きは、よしんば「強いられた選択」にせよ、かなりトリッキーなやり方にも思える。ValueActの今後の出方にまずは注目、といったところだろうか。

Trouble already? ValueAct not consulted on Microsoft-Nokia deal/ - GigaOM
Stay tuned for more Microsoft boardroom drama - GigaOM
Microsoft-Nokia Deal Timing Leaves ValueAct Fewer Options - Bloomberg


Nokiaの「苦渋の決断」「熟慮の結果」

 買収合意に至る両社の交渉の経緯については、BloombergやAllThingsDあたりが「2月のバルセロナ(Mobile World Congress)でMicrosoftのCEO(最高経営責任者)、Steve BallmerとNokia会長のRisto Siilasmaaが会った際に 、『(2011年2月の両社の提携が)期待したような結果を生んでいない』という話になり、そこから別の打ち手を考えよう』といういうことになった」「取引の骨子は7月半ばまでにほぼ固まっていた」「この間(約半年の間に)Nokiaの取締役会は50回以上もミーティングを重ねた」などといったことを記事に載せている。

Microsoft Raced to $7.2 Billion Deal With Soul-Searching Nokia - Bloomberg
Barcelona Rendezvous, 50 Nokia Board Meetings Led to Microsoft Deal - AllThingsD

 同時に、他の大きな出来事、つまり7月の大規模組織改編や8月下旬のBallmerの退任予告発表(事実上のレイムダック宣言)との兼ね合い(相互の影響)などについては、いまひとつよく分からないところが残る。結果的には、なんともちぐはぐな動きの連続という印象も受ける。理想を言えば、おそらくNokia端末事業の買収(発表)、組織再編、Ballmerの引退ならびに後継者(もしくは暫定CEO)の発表、という順番になろうか。

 Microsoftとは対照的に、Nokiaとフィンランドにとってこの取引は良い内容と、少なくとも表面的にはそう見える。お荷物になっていた端末事業を切り離すことができ、3万2000もの雇用を当面は確保でき、地図(位置情報)関連サービスの「HERE」を保有し続けられ、さらにMicrosoftがデータセンターの新設に2億5000万ドルも投じるという。GigaOM主筆のOm Malikは、「無線やセンサ、組込システムなどに関連する専門知識をもったNokia出身者がたくさんいる(略)これはフィンランドが『Internet of Things』の中心地になれる大きなチャンス」などと記している。

Why I think the $7.2 billion Microsoft-Nokia deal is a terrible idea - GigaOM

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