スマートデバイスへの対策は急務
--モバイル環境が進展していることをどう見ているか?
吉見 PCからどこにでも持ち運べるスマートフォンの利用が増える流れはもはや明らかです。当社への契約申し込みはウェブサイト経由ですが、PCとスマートフォンでは、エンドユーザーの意識や行動が異なります。商品や書籍の購入とは違って、保険商品はサイトに訪れても、すぐに加入というわけにはいきません。住所、氏名、年齢、病歴などの項目を入力するには、スマートフォンの小さな画面では心理的にも物理的にも障壁ができてしまいます。結局、スマートフォンではPCより申込率が低くなり、対策が急務です。

PCの置き換えではなく、スマートフォンのデバイス特性を生かした施策を試行錯誤しているところです。われわれは、すでにどんなデバイスでも同様のAPIで動くバックヤードを作っています。どのデバイスからでもそれに合わせたウェブページが表示できるため、問題はコンテンツをどう見せるかです。
--システム面での問題点は?
吉見 従来は、顧客自らに保険の種類や保障額を選んでいただき、保険に入ってもらうというセルフサービス型でした。今後は見込み客の管理が重要になってきます。当社にはコンタクトセンターがあり、電話によるフォローはできるので、これをテコに顧客との関係をさらに密接にして、統合的なデータ管理をしていきたいと考えています。人のステータスはだんだん変わっていくので、一気通貫でそのステータス管理できるものを自社で作ろうとしています。
--ITを意思決定のためにどう活用しているのか?
吉見 ダッシュボードを通じ、当社ウェブサイト関連の状況を計測しています。サイトを訪問した人が、契約に至るまでの動きの統計的に採取、保存、分析しています。また、施策の結果、どうなったのかを参考にするため、ビジネスインテリジェンス(BI)ツールを使っています。ただし、それだけを基準にして意思決定をしているわけではありません。顧客がどう機器やシステムを使うか、その意識と行動に着目し、コンテンツを用意することが大事だと思います。それには、技術というより、どう人間を理解するかが重要になってきます。
--ITに限らず、人間をどう理解するかを重視して成功した施策はあるか?
岩瀬 いきなりウェブ上で保険を申し込んでもらうというような考えをしないことです。例えば、既婚男性の場合、まずは資料を請求し、週末に奥様と一緒に資料を見てから申し込むと想定してフローを作成しました。「資料請求」と「申し込み」を分けた施策は効果的でした。
6月に代表取締役社長になりましたが、これまでもこれからもITを重視する取り組みに変わりはありません。利用者の立場に立った上で、できるだけシステムを大事にし、ビジネスを考える上での根幹に据えたいと思います。
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