本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、IIJの鈴木幸一 代表取締役会長と、トレンドマイクロの大三川彰彦 取締役副社長の発言を紹介する。
「SDNは今後5年ほどの間に通信の世界を大きく変える可能性を持つ技術である」
(IIJ 鈴木幸一 代表取締役会長)
IIJ 代表取締役会長 鈴木幸一氏
インターネットイニシアティブ(IIJ)とACCESSの合弁会社であるストラトスフィアが9月11日、SDN(Software-Defined Networking)の最新動向と同社の取り組みに関する記者説明会を開いた。通信業界の重鎮である鈴木氏の冒頭の発言は、その会見でSDNのポテンシャルについて語ったものである。
ネットワークを仮想化しソフトウェアで制御するSDNは、ネットワークの運用管理を劇的に効率化する技術として、クラウドやデータセンター事業者、通信事業者で導入検討が進んでいる。こうした動きを踏まえ、鈴木氏も「SDNによって、これまでさまざまな制約があった通信の世界が非常に柔軟性のあるものになる。われわれも今後、この関連事業に一層注力していきたい」と手ぐすねを引いているようだ。
会見では、鈴木氏のあいさつの後、ストラトスフィアの石黒邦宏副社長がSDNの最新動向を解説。続いて浅羽登志也社長が同社のSDNソリューションについて説明した。また、オフィスネットワーク向けSDNソリューションでアライドテレシスと技術協力することも同時に発表した。これらの詳しい内容については関連記事を参照いただくとして、石黒氏と浅羽氏の話で印象深かったコメントをそれぞれ紹介しておこう。
まず、石黒氏の話では、SDN最新動向の大まかな見方として「SDNは昨年来、データセンターでの活用が始まり、今年に入ってから通信事業者も使い始めるようになってきた。ではこれからどうなるかというと、来年以降はワイヤレス分野や企業オフィスでの活用が広がっていくだろう」とのコメントが印象的だった。
また、浅羽氏はストラトスフィアが目指すものとして「NaaS」という言葉を挙げた。「Network as a Service」の略で「ナース」と呼ぶ。いわゆるSaaSやPaaSのネットワーク版である。
同氏によると、「いつでもどこでも利用したいネットワーク機能を、ソフトウェアからオンデマンドでプロビジョニング可能なネットワークサービス基盤を提供する」サービス形態だという。加えて「さまざまなインフラをまたがるネットワークサービスを構成でき、インフラが提供する高度なネットワーク機能を制御し利用可能とする」こともポイントだと。そして、このNaaS基盤を実現するのがSDNだとしている。