「SDN(Software-Defined Networking)が単なるバズワードで終わるのか、それともITのオープン化のような大きな波になるのか。NECのSDNの取り組みは、ネットワークの重要な転換期における大きな挑戦」――。そう切り出すのは、NEC SDN戦略本部 本部長 野口誠氏だ。
NECは4月に、横断型組織であるビジネスイノベーション統括ユニット内に、SDN戦略本部を設置。7月には「NEC SDN Solutions」の名称で製品とサービスを体系化した。
2015年度を最終年度とする中期経営計画の中で計画している約1000億円の戦略投資のうち、約半分をSDN関連に投資する姿勢を明らかにした。「SDN関連の売上高は2012年度実績で100億円程度。これを2015年度には1500億円にまで引き上げる」と野口氏は語る。
NECはなぜSDNにここまで力を注ぐのか。野口氏に話を聞いた。
SDNでシステムを高度化
NECは、2008年からスタンフォード大学の「Clean Slate Program」に参加。「Open Network Foundation(ONF)」などの標準化団体やコミュニティにも積極的に参加している。
同社はまた、SDNの中核となる標準規格「OpenFlow」を取り込んだ製品を世界で初めて投入するなど、SDNの普及促進に取り組んでいる。統合管理ソフトの「WebSAM」やスイッチ「UNIVERGE PF」シリーズでも、商用クラウド基盤でいち早くOpenFlowベースのSDNを実現。運用の自動化を達成している。
NEC SDN戦略本部 本部長 野口誠氏
「これまでのNECのメッセージはOpenFlowが中心だったが、ここにきて、SDNという枠で語られることが増えてきた。NECとしてもSDNを再定義し、それを軸にメッセージを発信することになる」(野口氏)
NECでは、SDNを「ネットワークをソフトウェアで動的に制御すること、そしてそのアーテキチクャ」と比較的広い範囲で定義。「SDNによって、ICTシステムを高度化し、社会インフラの充実につなげる」と、同社が掲げる社会ソリューション事業で重要な役割を担うことを示す。
NECでは、これまではデータセンターを中心に展開してきたSDN事業を企業と通信事業者を対象に適用マーケットを拡大。製品事業の観点から、ソリューション事業へと展開し、事業拡大の一歩を踏み出すことになる。
7月に発表したSDN Solutionsは、NECがSDNを軸としたソリューション事業を展開するための製品とサービスを体系化したものであり、同社の方向性が示されたものだといえる。
一般企業向けの製品群として「NEC Enterprise SDN Solutions」を用意。ここではネットワーク最適化、セキュリティ、モバイルという3つの観点からのソリューションを用意する。データセンター接続最適化やオフィスLAN最適化によるネットワーク最適化とアクセス認証によるセキュリティに関しては、10月から販売を開始するが、モバイルに関しては、BYODにも対応したソリューションとして年度内にも製品化する考えだという。
通信事業者向けには「NEC Telecom Carrier SDN Solutions」として、統合運用管理を目的としたネットワーク管理、ネットワーク機能の仮想化とトランスポートによるネットワークインフラをメニュー化。企業や官公庁、通信事業者を含めたデータセンター市場向けの「NEC Data Center SDN Solutions」では、IaaS運用自動化による運用管理、データセンターネットワーク統合による統合ソリューションをメニュー化する。