大河原克行のエンプラ徒然

売上高100億円を1500億円に--SDNで大きな挑戦に出るNECの本気度 - (page 2)

大河原克行

2013-07-26 15:48

戦略投資の半分をSDNに投入

 NECの野口氏は、「SDNが単なるバズワードで終わるのか、それともITのオープン化のような大きな波になるのか」と前置きし、「NECのSDNの取り組みは、ネットワークの重要な転換期における大きな挑戦になる」とその意義を説明する。野口氏は、SDNの流れをとらえて「これまでのIT市場で起きた変化と同じことが、ネットワーク市場でも起きている」と指摘する。

 IT市場では、かつてのメインフレームやオフコンに代表されるプロプライエタリの世界から、x86サーバとLinuxやWindowsによるオープンな世界へと進展。ITの低価格化が進展するきっかけになったのに加え、現在では、この流れがミッションクリティカル領域にまで広がっているのは周知の通りだ。そして、仮想化によって、クラウドコンピューティングの世界へと、流れを一気に加速させている。

 一方でネットワークの世界は、オープン化の流れとともに、いよいよ仮想化の流れが、SDNによってもたらされようとしている。そして、お互いにオープン化したITとネットワークの融合により、新たな市場が出現するといったことも期待される。

 「IT市場で起こったことを“逆さ富士”のように、ネットワーク市場に当てはめることができる。オープン化、クラウド化、低価格化、水平分業化、コモディティ化などがネットワークの世界でも起こってくるだろう。当初は、技術が注目され、製品に関心が集まる。そして、最終的にはソリューションが重視されるようになる」(野口氏)


SDNによって、システムとネットワークが融合した市場が出現するという。水面に映る富士山のように“逆さ富士”の形で新しい市場ができるとしている(提供:NEC)

 NECは、2015年度を最終年度とする中期経営計画の中で約1000億円の戦略投資を計画しているが、そのうちの約半分がSDN関連への投資になるという。ここでは、関連ビジネスユニットにおける製品開発への投資に加えて、SDN戦略本部によるソリューションフォーカスへの投資も含まれることになる。

 「SDN関連の売上高は、2012年度実績で100億円程度。これを2015年度には、1500億円にまで引き上げる」と野口氏は今後の事業計画について明らかにする。NECの試算によると、2015年の全世界のSDN市場は1兆3000億円の規模を想定しており、NECはそのなかで10%以上のシェアを占める考えだ。

 「今後3年で100億円から1500億円へという目標はあまりにも大きく見えるが、通信事業者や企業のネットワークがSDNへと移行してくるという環境を捉えれば話は別。NECのネットワーク事業に新たにSDNのビジネスが1400億円加わるというのではなく、現在のネットワーク関連事業の中でSDNへの移行が進むことで、1500億円という規模を想定している。そうした意味では、確実に射程距離にある目標」(野口氏)

 NECは、OpenFlowにいち早く乗り出したことで、SDNの分野ではすでにリーダー的位置付けを担っている。今後も、この領域でリーダーとしての存在を維持することにこだわりをみせる。SDNが、ITのオープン化でみられたような大きなうねりになるのであれば、今、NECがいるポジションは極めていい位置にあると言える。

 ネットワーク分野での実績をもとに、先行した製品とサービス、そしてソリューションでの品揃えで少なくとも今後3年の間に遅れがでなければ、NECはSDNの領域で確固たる地位を築けるだろう。そして、それが世界戦略に打って出る切り札にもなる。

 SDNは、NECが新たな企業像を築く上で重要な一手になるのは間違いない。

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