4つめは、エネルギー消費者への新たな価値訴求だ。英British Gasでは、電力以外の営業利益が2011年時点で10%を超えている。同社が展開する家庭向けサービスには、省エネにつながるリフォーム(断熱材設置、屋内電気工事、太陽光バネル設置など)、機器修理・保険(定額でのボイラー機器などの故障対応、定額での電気配線などの故障対応)、配管トラブル対応などがあるという。
「こうしたトレンドは日本でもまず間違いなく起こってくる。欧米では、電力自由化が1990年代から始まり、2000年代後半からスマート機器の設置などが本格化した。20年という長い期間の取り組みだが、日本では2020年に向けて、ここ5年くらいで一気に取り組みが進むと見ている」(宮脇氏)
アクセンチュア 経営コンサルティング本部 シニア・マネジャー 伊藤剛氏
震災以降、エネルギー事業者に対する信用度は低下
経営コンサルティング本部シニア・マネジャーの伊藤剛氏は、調査レポート「新しいエネルギー消費者体験の実現」を解説した。伊藤氏は、グローバルと比較して日本の消費者が異なる関心を示した事柄を紹介した上で、エネルギー企業や新規参入企業が何に取り組んでいけばよいのかアドバイスした。
日本の消費者に見られたグローバルとの違いについてはまず、エネルギー事業者への信用が低下していることが挙げられる。「エネルギー消費に関して最適な行動を取るためにどのような組織からの情報を信用しますか」との問いに対して「電力会社やエネルギー事業者を信頼する」との回答はグローバルでは24%だが、日本は13%だ。
2012年の24%から大きく数字を落とした上に「電力会社やエネルギー事業者を信用しない」との回答は34%でトップを占めている。また、信用度を団体別に見ると、グローバルでは学術団体や科学協会、環境保護団体、消費者団体に次いで4番目に位置だが、日本では最低の8番目になっている。ここから「日本の消費者は、エネルギーについて信頼できるアドバイザーを求めていることがわかる」(伊藤氏)という。
エネルギー事業者に対する信用度(アクセンチュア提供)
信頼獲得のために何が課題になるのかについては、サービスへの期待(重要度)と提供されるサービス(パフォーマンス)を聞き、そのギャップが大きかった項目から探っている。グローバルと日本では、ともに「分かりやすいこと」「エネルギーに関するアドバイスの有無」のギャップが大きかった。国内については「供給が信用できること」「提携に基づく価値提供の追求」「環境に優しいこと」などに課題があるという。「異業種との提携などを進め、エネルギー全体を提供するといったことが消費者から期待されている」(伊藤氏)
サービスの課題に対する調査(アクセンチュア提供)