オラクル、電力業界向けシステム提案を強化--自由化睨む、専門部隊を設置

大河原克行

2013-04-25 15:52

 日本オラクルは4月25日付けで社内に「電力システム改革推進室」を設置。電力業界向けITシステムの提案を加速する。「小売および発電の全面自由化」と「発送電分離」の分野に焦点をあて、電力・エネルギー会社や新たな電力参入会社、官公庁、自治体などに対し、北米や欧州、アジア地域での電力自由化、それに伴う発送電分離、スマートグリッド構築で培ったノウハウと実績を生かしてシステムを提案する。

 全面自由化および発送電分離は、広域系統運用の拡大とともに、政府が推進する「電力システム改革」で示された3本柱に当たるもので、電力安定供給の確保、電気料金の最大限の抑制、需要家の選択肢拡大や事業者の事業機会の拡大を目的にしている。


電力システム改革推進室 室長の田積まどか氏

 同社の電力システム改革推進室 室長の田積まどか氏は「9000万件の家庭などが電力会社を自由に選択できるようになり、小売料金についても自由化する。その中で新たなメニューの提案や料金計算請求など、ビッグデータを活用できる、しっかりとしたシステム基盤を構築しなくてはならない。コスト削減に向けて、業務効率化、綿密な設備投資のシミュレーションをスピーディーに行う点でもITが不可欠となる」と説明した。

 「明日が暑くなるといった場合、それに伴い、電気料金を引き上げることを記したメールを利用者に配信し、その時間帯に外出するなどの提案をすることで、電力使用のピーク時への集中を避けるといったことができる。こうした仕組みを実現する上で、どんなことができるのか、どんな点で苦労したのかといった、海外での事例をもとにした生の声を生かした提案を強みにしていきたい。日本オラクルだけでなく、米本社を含めた形でソリューションを提供していく。電力業界から、日本オラクルが最初に相談してもらえる会社になりたい」(田積氏)

  • 電力の供給の仕組みが大きく変わろうとしている

  • Oracleは世界各地で電力業界のシステムに携わってきた

  • 電力システム改革推進室が中心となる

 現在、世界の公益事業者のトップ20社はすべてオラクル製品を使用しており、日本の電力会社のすべてにオラクル製品が導入されているという。電力システム改革推進室では、日本にも一部常駐する米本社のUtility Global Business Unitと連携。社内横断的な連携も展開する。

 電気、ガス、水道などの公益業界に特化したアプリケーション「Oracle Utilities」、統合基幹業務システム(ERP)パッケージの「Oracle E-Business Suite」、「Oracle Hyperion」などのソフトウェアと、データベース専用機「Oracle Exadata」やアプリケーションサーバ専用機「Oracle Exalogic」などを組み合わせた総合的なシステムを提案する。これにより、料金管理や顧客管理、メーターデータ管理、電気事業会計や電力管理会計、停電と配電の管理、マイクログリッド、資材調達管理、発送電の設備保全管理、設備計画の策定、グループ経営管理などを可能にするという。

 Oracle Utilitiesは、料金管理や自動配電管理、作業管理など、配電から小売業務までを支援するアプリケーション群であり、数百社におよぶ導入事例をもとに、スマートメーター技術と顧客、エネルギー事業者、業務プロセスを連携させ、業界ナレッジを生かした解決策ンとして提供できる点が特徴としている。

  • 今後の日本の電力供給システム

  • 電力供給システムでの発送電分離は大きな変化となる

  • 公共系アプリケーション群のOracle Utilitiesはさまざまなものが用意されている

 2016年度からの電力の小売自由化に向けて、新規参入企業はシステム構築に時間的余裕がないのが実態。「従来のITシステムの構築手法では間に合わない。パッケージを活用することで、迅速なシステム構築が可能になることを訴求するとともに、柔軟に変更できるシステムとして提案したい」(田積氏)とそのメリットを強調した。

 日本オラクルの代表執行役社長で最高経営責任者(CEO)の遠藤隆雄氏は今回の施策の意義を以下のように説明した。


代表執行役社長 最高経営責任者の遠藤隆雄氏

 「オラクルは、世界各国の電力業界で多くの実績を持ち、価値を提供できる企業である。海外の事例や知見を日本にどんどん紹介したい。エネルギーと電力は、日本の安全保障の根幹を成すものであり、生活、企業活動に欠かせないものである。その中で電力業界では、送配電の分離による自由化などにより、大きなパラダイムシフトが起ころうとしている時期であるが、システムが間に合わないから、これを先送りにするということがあってはいけない。安倍晋三首相も、イノベーションを起こすためにはITが不可欠だと指摘している。日本オラクルでは、電力システム改革推進室という特別な体制をつくり、日本の電力業界のイノベーションに対応する」

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