本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米Cisco SystemsのGary Moore 社長兼最高執行責任者(COO)と、日本HPの橘一徳 統括本部長の発言を紹介する。
米Cisco Systems 社長兼COO Gary Moore氏
「私たちは今、Internet of Everythingの時代に入ろうとしている」 (米Cisco Systems Gary Moore 社長兼COO)
シスコシステムズが10月8日、2014年度の事業戦略説明会を開いた。冒頭の言葉は、この機に来日した米Cisco Systemsの社長兼最高執行責任者(COO)、Gary Moore(ゲイリー・ムーア)氏が会見のオープニングで、同社が提唱する「Internet of Everything(IoE)」を強調したものである。
会見ではMoore氏に続いて、シスコシステムズ代表執行役員社長の平井康文氏が日本法人の事業戦略について説明。さらに、同社シニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのSurya Panditi(スリヤ・パンディティ)氏がネットワークイノベーションについて、同社専務執行役員の木下剛氏がアーキテクチャ戦略について説明した。
会見全体の内容については関連記事を参照いただくとして、ここではMoore氏が強調したIoEに焦点を当ててみたい。
「インターネットですべてをつなぐ」ことを意味するIoEは、数年前から使われている「あらゆるモノがインターネットにつながる」ことを意味する「Internet of Things(IoT)」を拡張した考え方だ。
IoEの考え方には、機器やモノがインターネットにつながるだけでなく、人と人がつながる手段の拡大、必要な情報を必要なタイミングで人やモノに提供するプロセス、意思決定を加速するためのデータの活用なども含まれている。
Ciscoの試算では、IoEによって2013年から2022年までの10年間に生み出される世界の経済価値は、およそ14兆4000億ドルに及ぶ。このうち、日本国内で生まれる経済価値は約76兆円と見込んでいる。
こうした数字を紹介したMoore氏は、「このIoEの世界で今、先頭を走っているのがCiscoだ。IoEの世界がこれから大きく広がる中で、Ciscoはリーダーであり続けなければならない。その原動力となるのは、スピーディーなイノベーションであり、ぶれない実行力であり、有能な人材であり、揺るぎない価値観である」と力説した。
IoEの世界でナンバーワンのベンダーであり続けるのが目標というMoore氏だが、どうやら「ナンバーワン」というのはビジネス規模ではないようだ。その意味は、「顧客の戦略的なパートナー」として顧客からナンバーワンと認められることにあるという。つまりは顧客満足度ナンバーワンが目標ということだろう。