部下にいかに仕事を任せるかというのは、筆者自身もまだ修行中のスキルである。部下には筆者と同じレベルの成果を上げられないと思っているわけではなく、期待通りの時間内に仕事を終えるのは無理だと考えているためだ。やり方を説明する時間も、スケジュールを圧迫することになると思っている。
しかし、こういった態度は見直す必要がある。Professionalism Mattersの創設者であるDana Brownlee氏によると、部下に仕事を任せるというのは重要なスキルなのである。とは言うものの、このスキルが職場で活用されているとは言い難い。
Brownlee氏が自らの経験を通じて見出した実態は次のようなものだ。ほとんどのリーダーは統制を失うことに対する恐怖心から部下に仕事を任せることに難色を示しており、結果として長期にわたって負担を強いられている。詰まるところこういったリーダーは、スキルの習得機会を奪い、部下に対する不信感を周囲に感じ取らせるとともに、「完璧病」を患ってしまうのである。
「部下に仕事を任せる」のは、慣れるまで少し居心地の悪さを感じるかもしれないが、Brownlee氏はリーダーがいつ、どのように仕事を任せればよいのかという疑問に対する答えを得られよう、「部下に仕事を任せる際の悩みを克服する方法」を考察している。以下がその概要だ。
#1:まずは小さな仕事から任せる
失敗の許されない仕事をいきなり任せてはいけない。(初めのうちは)小さな仕事を任せ、徐々に大きく重要な仕事を任せていってほしい。
#2:適切な仕事を選び出す
すべての仕事がその対象となるわけではない。仕事によっては、それ自体の重要性だけでなく、特定の部下に任せた方が他の部下に任せるよりも良いという判断が働く場合もあるためだ。これは、新たなスキルの獲得のために部下に無理をさせるべきではないという話ではなく、可能なのであれば各人固有の能力や興味、見識を見極めるという話である。例えば、部下にはウェブ開発者としてのスキルがあるものの、新しいウェブサイトのプレゼンテーションをクライアントに向けて行った経験がないのかもしれない。その場合でも、プレゼンテーションという未経験の仕事を任せることで、彼らの地力を引き出すとともに、言わば「自信のクッション」を提供できるのである。
#3:非現実的な期待は抱かず、部下自身のやり方を奨励する
部下が仕事を「誤ったやり方で行う」という話と、あなた自身が今まで行ってきたやり方を使わないという話は違うのを忘れないようにしてほしい。スタイルの違いは所詮、スタイルの違いでしかない。箇条書き記号を用いる際に、彼らが丸を多用している場合、あなたの好みが四角であったとしても、その好みを押しつけてはいけない!