SAPジャパンは11月27日、インメモリーデータベースの新版「SAP HANA Service Pack 7(SP7)」の提供を開始した。SAPの統一ユーザーインターフェースである「SAP Fiori」を採用。ユーザーエクスペリエンスを高めるとともに、使用する言語に依存しないなど、オープンなアプリケーション開発環境へと拡大。ミッションクリティカルシステムへの適用に向けた各種機能を追加しているという。
SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスソリューション統括本部長の堀田徹哉氏は「HANAの出荷から3年が経過した。SP5までは、アナリティクス対応をはじめとした機能の拡張やアプリケーションの進化、アプリケーション対応の広がりが中心となっていたが、今年6月のSP6では、大規模環境の基盤にステージを上げた。SP7では、プラットフォームとしての柔軟性を持たせたものとなる」と位置付けた。
SAPジャパン バイスプレジデント ビジネスソリューション統括本部長 堀田徹哉氏
SAPジャパン ビジネスソリューション統括本部 リアルタイムプラットフォーム部 シニアマネージャー 大本修嗣氏
開発者は、“コアデータサービス(CDS)”と、事前にパッケージ化されたデータ品質ライブラリを活用することで、プログラムの再利用と開発の迅速化を図ることができるという。HANAの「Smart Data Access」技術に書き込み機能が加わることで、ほかのシステムとの連携を強化。Oracle DatabaseやMicrosoft SQL Serverなどのソースに対応した。
システム連携では、分散並列処理プログラミングフレームワークの「Apache Hadoop」とも連携する。HadoopディストリビューションのHortonworksと緊密に連携できるという。
アプリケーション基盤としてのHANAはCDSを活用して、従来からのSQLのハンドリングだけでなく、ビジネスが求める機能を実装する。SQLを拡張するドメイン固有言語(Domain Specific Language:DSL)としては、データモデルを定義するための「Data Difinition Language(DDL)」、データを読み込む「Query Language(QL)」、データを書き込む「Data Manipulation Language(DML)」、データへのアクセスを制御する「Data Control Language(DCL)」を実装しているという。
高可用性(HA)と災害復旧(DR)をサポートする機能も搭載する。これらの機能には、スナップショットやリプレイ用ログ、複雑なマルチホストのメトロ、ストレッチクラスタ構成のためのカスケード型システムレプリケーションなどが含まれる。
HANAは今後、パッケージ化したアプライアンスとしての提供だけでなく、“テーラード・データセンター統合(TDI)”として提供することも明らかにしている。ユーザー企業が所有している大規模なストレージをHANAで使えるようにしていく。展開に柔軟性を持たせるとともに、既存IT投資を保護できるようになるという。ストレージを専門とするパートナーを通じて、構成の検証や保守サポートモデルの契約なども可能にしている。
「クラウド事業者にとっても、TDIで提供される柔軟性は、重要なものになるだろう」(SAPジャパン ビジネスソリューション統括本部リアルタイムプラットフォーム部 シニアマネージャー 大本修嗣氏)
堀田氏は「SP7では、HANAプラットフォーム上でのシステム開発の選択肢を拡大することにより、アプリケーションの広がりに対応できるほか、HANAを中心としてエンタープライズ上の情報を集約し、システム開発のオプションも広げた」と説明して、こう続けた。
「HANAのデプロイメントにおいて、柔軟性を持たせたのが今回の進化。エンタープライズ環境では、コンシューマーアプリと同じUIを実現するのは難しかったが、HANAは、もともとレスポンスやプロセスの問題を解決するものであり、必然的にUIも改善することにも取り組むことになる」
会見では、10月末時点でのHANAの導入実績などについても触れた。現在、全世界で2280社が導入。そのうち、450社以上がビジネスアプリケーション群「SAP Business Suite」を利用。日本では、導入企業数が100社に達し、そのうち10社がBusiness Suiteを利用していることを明らかにした。
「全世界では44万5000人がHANAを利用しており、HANAのビジネスは前年比180%となっている。日本では、HANAのコンサルタントが350人以上となっているが、トレーニングは年間1500~2000人規模を対象に実施。半年に一度ずつ開催しているハンズオンも毎回250人以上が参加している。SAPがデータベースやプラットフォームの会社として認知されてきている」(大本氏)
HANAを世界で最初に導入したのは日本市場であり、「ロケットスタートした実績がある」(大本氏)が、「海外では中小企業の案件が多いため、日本での導入件数が少なく見える。実際には、日本の導入案件は高度であり、先行的な大規模案件が多く、結果として件数では少なく見えるだけ」(大本氏)となっている。
(SAPジャパン提供)