クラウドサービス事業者を中心に、特定ベンダーに依存しない機器の調達を進める動きが出てきた。この動き、特にPCサーバ市場に大きな変動をもたらす可能性がある。
CTCがOCPとプロバイダー契約を締結
伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が先ごろ、興味深い発表を行った。データセンター向けハードウェアを標準化、オープンソース化して大規模データセンターに最適なハードウェアを設計、提供するための運営団体「Open Compute Project Foundation(OCP)」とソリューションプロバイダー契約を結び、OCPが認定する製品の販売、設計、構築、保守を4月に開始するというものだ。OCPによるソリューションプロバイダー認定は、CTCが国内で初めてとなる。
CTCによると、米国ではデータセンター向けに最適化された低価格低消費電力製品の需要が拡大しており、特に多くのITリソースを必要とする大規模クラウドサービス事業者を中心に各種最適な仕様をコミュニティで規定し、特定ベンダーに依存することのない機器の調達を進めているという。
OCPは、米Facebookが2011年に開始したプロジェクトで、サーバやラック、電源装置や冷却設備、ストレージやネットワークスイッチの設計図のオープンソース化を進めている。現在ではFacebookなどのユーザー企業に加え、多くの大手ハードウェアベンダーやソフトウェアベンダー、システムインテグレーターがOCPに参加している。
一方、日本国内においても電力料金の値上げに伴い、電力消費量が多いデータセンターでは消費電力の削減が課題となっている。クラウドの普及によって、需要拡大に伴う処理性能の向上と低コストを実現できる経済性が求められつつあるという。
OCPとソリューションプロバイダー契約を結んだCTCは、OCPの仕様に基づいた製品を提供する受託製造会社からOCP認定製品を仕入れ、キッティング、ラッキングを行い、顧客に提供できる。OCPからの最新のデータセンター向け技術情報の入手とOCPが認定する製品を顧客に提供することが可能となり、顧客が求めているデータセンターに適したシステムの提供や、ハードウェアも含めたオープン化のニーズに対応することができるとしている。
特定ベンダーではない製品が広がる可能性も
なぜ、このCTCの発表が興味深いのかというと、特にPCサーバ市場に大きな変動をもたらす可能性があるからだ。
その兆候は、グローバルなPCサーバ市場ですでに出てきている。米調査会社のIDCが公表している同市場の出荷台数シェア(2013年7~9月)によると、1位のHP(29.7%)、2位のDell(21.4%)に続いて、特定ベンダーではない受託製造会社による「ユーザーへの直接出荷」が14.6%で3位に入った。これはつまり、大規模クラウドサービス事業者がデータセンターの効率運営を図るためにPCサーバを自ら設計し、受託製造会社に数万台単位で発注しているものである。
こうした現象の背景に、OCPをはじめとしたコミュニティの動きがある。ただ、CTCによる発表の意味は、受託製造会社によるユーザーへの直接出荷の枠を広げ、そこで扱われている製品をソリューションプロバイダーとしてさらに拡販していこうというものである。しかもCTCはそうしたビジネスを、まだユーザーへの直接出荷があまり行われていない日本国内で展開すると。それが同社の今回の発表に込められた狙いである。
CTCを皮切りに有力なソリューションプロバイダーが同様の動きに出れば、規模に関係なくクラウドサービス事業者に広がっていく可能性がある。さらには、企業が所有するプライベートクラウドにも適用されるケースが出てくるだろう。その意味でCTCの今回の発表は、国内のPCサーバ市場における大変動の予兆を示す動きかもしれない。
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