空間データが変える未来

屋内測位技術の現在地(後編) --ウェアラブル端末がもたらす可能性

高橋睦(野村総合研究所)

2014-02-28 07:30

 前編は “G空間”で今後の重要技術と期待が高い、屋内測位や屋内外シームレス測位手法のうち、「IMES」「 Wi-Fi(無線LAN)」「音波」などを紹介した。後編では「可視光通信」「歩行者自律航法(PDR)」「iBeacon」の技術やビジネスを解説する。

 可視光通信は、専用送信基板を取り付けたLED照明からデジタル信号を発生させて情報伝達する仕組みである。精度は1メートル程度と比較的高く、カメラで検知するため端末の汎用性は高いが、光が当たらないカバンの中などでは作動しない。博物館や工場など、常に端末の画面を確認しながら活動するというシチュエーションにおいて有効と考えられる。

 さらに、現在注目が集まっているものとしてiBeaconが挙げられるだろう。「Bluetooth Low Energy」というAndroidでも使用可能な技術を使い、「iOS 7」に標準搭載されるとともに、MLBとの実証実験などでさまざまなサービスシーンが提案されており、広がる可能性がある。iBeaconが注目を浴びたのは、認知から購買に伴う決済までの完結したサービスをiOS内で一括して提供できる可能性があるからである。それはつまり、マルチチャンネルで顧客に配信して認知された情報のうち、どれが実際の購買やリピートに寄与したのかなど、一連の顧客行動をワンストップで分析できる可能性が高まったことを意味する。

 このように商業施設で広がりつつ屋内測位だが、BtoCだけでなくBtoBでも事業機会が拡大すると期待されている。適用するサービスとしては、商業施設や病院、工場、物流施設、オフィスなどでの従業員の行動把握や業務管理、位置に応じた従業員へのマニュアル表示や情報伝達、工場での生産ラインの監視、工場やトンネル、地下採掘現場などでの安全管理やアラートなどが挙げられる。

 これまで、例えば、通過検知だけだったらセンサや電子タグ、利用者の能動的な操作が可能な場合は、2次元バーコードや近距離無線通信(Near Field Communication:NFC)でタッチし、マニュアルを確認するなどが可能だった。さらに先述した屋内測位技術により、特定ゾーンへの進入検知や詳細な位置測位が可能となる。人や物のリアルタイムでの行動把握が可能となり、誰(何)がどのように動いたか、データとして蓄積できる。データが蓄積されれば、使われない時間帯や場所の消灯による電力使用量の削減、より効率的な施設やレイアウトの設計、従業員の業務マネジメントが可能となるだろう。日本のものづくりが、さらにもう一段効率化することが期待される。


屋内測位 位置検出方法

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