デルは2月27日、GPU技術を検証するための施設「デルGPU ソリューションラボ」をデル東日本支社内に2月28日に開設した。パートナー企業と協業し、GPUを利用した高性能コンピューティング(HPC)や仮想デスクトップ基盤(VDI)の展開を支援する。
同施設では、デル東日本支社内の「Dell Solution Center」にGPUを搭載した常設のハードウェアを設置し、GPU環境で必要なアプリケーションなどを検証できるようにした。開設の背景には、GPUを利用した演算処理やシミュレーション、仮想化環境でのGPUの活用などが注目を集めるようになり、アプリケーションや利用形態に応じた検証が求められるようになったことがある。
デル エンタープライズ・ソリューション統括本部 エンタープライズビジネス開発部 部長 馬場健太郎氏
エンタープライズ・ソリューション統括本部エンタープライズビジネス開発部部長の馬場健太郎氏は「GPU技術の検証には、サーバからストレージ、Wi-Fi、ネットワークセキュリティ、ワークステーション、シンクライアントなどにいたるまでのトータルなパーツが必要で、それらをラボで体系化した」とラボ開設の意義を説明した。
ラボが取り組むテーマとしては、大きくHPCとグラフィックス仮想化の2つがある。
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前者は、具体的なハードウェアとして、NVIDIAやAMDのGPGPU、コアプロセッサを搭載した2Uのラックサーバ「PowerEdge R720」や高密度型サーバ「PowerEdge C8000」による並列分散システムを提供する。
後者は、それらハードウェアに加え、オフィス向けの垂直統合型システム製品「PowerEdge VRTX」にVMwareやCitrixのGPU用VDIを利用できるグラフィクス仮想化システムなどを提供する。クライアント端末としては、スレートPCやシンクライアント「Wyse」の利用も可能だ。
このほか、検証機を貸し出して、ネットワーク負荷など実際の環境でしかわからないことを検証できるようにする。技術ブログサイト「Dell TechCenter」での情報公開や定例セミナーも展開する。
デル エンタープライズ・ソリューション統括本部 エンタープライズビジネス開発部 ビジネスデベロップメントマネージャ 田上英昭氏
エンタープライズ・ソリューション統括本部エンタープライズビジネス開発部ビジネスデベロップメントマネージャの田上英昭氏によると「すでに2013年11月からテスト期間として検証してきており、製造業向けのグラフィックス仮想化を中心に週2~3件、累計で30件程度を検証してきた実績がある」という。
グラフィックス仮想化の検証環境の例としては、グラフィックカード「NVIDIA Grid K2」を搭載したPowerEdge R720でハイバーバイザ「XenServer 6.2」を動作させ、その上で仮想化したGPUをクライアントPCに割り当てるといったケースがある。ワークステーション上で動作させている3D CADなどがVDIで実務に適するかどうかなどを検証できる。
製造業での流体解析や構造解析などでの並列処理についても、大規模な計算クラスタをGPGPUやGPU仮想化を使った環境を構築し、クライアントとサーバの間でのデータ転送量を削減したり、セキュリティを確保したりする効果などを検証できる。
ラボに設置されたPowerEgde。(ラック上から)R720、C8000、VRTX
田上氏によると、GPUを活用したVDIはコスト面での効果も大きいという。一般的なVDIでは、システムの一括管理や配備の容易さなどから、運用管理コストの削減が見込めるが、PCそのものが低価格化していることから、ハードウェアの初期導入コストは高くなりがちだ。
GPUを使ったVDIでは、ワークステーションやグラフィックカードなど、ユーザー1人が使うハードウェアコストはもともと高い。仮想化したGPUを必要なユーザーに適宜割り当てられるため、1人あたりの利用効率も高まる。ワークステーションで3D CADを使うような環境では、GPUを活用したVDIに移行することで、運用管理コストだけでなく、ハードウェアコストそのものが下がるケースもあるのだという。
ラボ開設には、CADアプリケーションやGPUの販売パートナー、VDIやHPCなどを手掛けるパートナー各社が協賛している。SIパートナーとしては、伊藤忠テクノソリューションズ、アルゴグラフィクス、HPCソリューションズ、新日鉄住金ソリューションズ、兼松エレクトロニクス、電通国際情報サービスがある。ISVパートナーとしてはソフトウェアクレイドル、ソリューションパートナーとしては、エヌビディア、AMD、シトリックス・システムズ・ジャンパンがある。今後順次拡大する予定だ。