中外製薬は、2000年以降に社内のさまざまな場所で個別に導入してきた仮想アプリケーション配信基盤を全社的に共通化し、一元管理できるようにした。基盤を提供するシトリックスがユーザー事例として公開している。
中外製薬では2000年、副作用のデータベースを利用するためのアプリケーション環境として、古いWindows環境上のものを継続利用したいという要望があったことから、サーバで動作するアプリケーションの画面をリアルタイムで端末に配信するシステムであるXenApp(当時はMetaFrame)を導入した。その後、2007年にも臨床業務の部門からからリモートでシステムを使いたいという要望があり、NetScaler Gateway(旧Access Gateway)を利用したリモートアクセス環境を構築した。
さらに、協力企業がXenApp経由でアプリケーションを利用するための仕組みとして使うようになった。その後も、社内のさまざまな場所にXenAppを導入した結果、XenAppサーバが分散してしまい、運用管理が煩雑になったという。
対策として、XenApp基盤を共通化して展開する「標準Citrix環境」の構築に乗り出した。標準Citrix環境は2010年に着手して2011年に運用を開始、Windowsの各バージョンに対応する環境とテンプレートを作成し、短期間にアプリケーション配信を実現できるようにした。
XenApp環境が稼働するサーバは、災害、障害対策や事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)の一環として冗長構成にしているほか、遠隔地のデータセンターにディザスタリカバリ(DR)用のサイトも用意している。この環境で、現在約120台あるXenAppサーバのほとんどを仮想化しており、現在はピーク時で350~400ユーザーが同時接続しているという。
標準Citrix環境により、OSとアプリケーションの分離が実現。アプリケーションの改修やテストの回数を減らすことができ、開発コストを大幅に低減できるようになったとのこと。また、1つのシステムで多言語のアプリケーションをサポートできるようになった。XenAppのライセンス管理が一元化され、各部門でXenAppを管理していた担当者の負担がなくなったほか、セキュリティ設定も共通化できるようになるなど、運用管理面でも利点があった。
MR向けに配布している約2100台のiPadから、Windows系のアプリケーションを利用するモバイルワーク環境も実現した。一部の社員は会社支給のPCを自宅に設置し、障害発生時や緊急時に社外から対応するなど、在宅勤務も始まっている。今後は要望があれば個人のデバイスを社内で利用するBYODの導入も検討するとしている。
XenAppシステム概要図