“APIエコノミー”の可能性
CA Technologies セキュリティ・ソリューション担当ディレクターの大友淳一氏がウェブAPIを取り巻く状況を以下のように説明した。
CA Technologies セキュリティ・ソリューション担当ディレクター 大友淳一氏
「クラウドの普及が進み、企業が保有するデータは外部へと分散しており、企業や組織内外のシステム連携が必要になっている。モバイルの進展で、従来のPC向けウェブブラウザだけを前提としたシステムでは不十分になってきた。“モノのインターネット(Internet of Things:IoT)”の時代には人間が介在しない通信をいかに安全に保つかが問題になる」
このような環境での、基盤の一つとなるウェブAPIのセキュリティ確保は必須であり、それがLayer 7の役割となる。企業のリソースが外部に出される場合、ウェブAPIがそれらの要素をマッシュアップして、新たな価値が創造される可能性が指摘されている。「公開されたデータに価値を付加し、新しい市場を構築できる」(大友氏)
公開されたAPIが複数の企業に利用され、彼らの着想からこれまでになかったようなサービスが生み出され、複数のAPIの組み合わせが次のビジネスへと変容する、いわゆる“APIエコノミー”が論議されている。Layer 7は、この領域からの需要に期待している。
混乱の可能性を秘めるAPI
現在、APIなしにはネットサービスやモバイル端末向けのアプリやサービスは成り立たなくなっている。特にREST形式のAPIはその使いやすさから瞬く間に広がってきた。大友氏が指摘するように、APIをベースにした新しい経済圏が広まる可能性も秘めている。
CA Technologies シニアバイスプレジデント Scott Morrison氏
Layer 7で最高技術責任者(CTO)で現在はCA Technologiesでシニアバイスプレジデントで最上級エンジニアを務めているScott Morrison氏はZDNet Japanの取材に「シンプルだからこそAPIは広まっている」と解説する。現在APIが担っている役割は、かつてはSOAP(Simple Object Access Protocol)やCORBA(Common Object Request Broker Architecture)などが担っていた。だが、SOAPの規格に携わっていたMorrison氏によれば、「SOAPは複雑にし過ぎた」ためにあまり広まることがなかったという。
使いやすさから広まってきたAPIだが、その使いやすさ故に混乱を招いている状況とも言える。企業内でのシステムやモバイルアプリを開発するエンジニアは、本来であればセキュリティを保てるように開発する必要があるが、すぐさま開発しなければならないために、セキュリティ上の問題をあまり考えずにAPIを開発、あるいは企業の外側にあるAPIを活用する。
使いやすいAPIは「エンジニアは何の縛りもなく使える」(Morrison氏)ために、「コントロールされない」という状況を生み出してしまっている。APIは企業内アプリケーションでのマッシュアップにも活用されている。前述のようにスマートフォンなどのモバイル端末はAPIでサーバに問い合わせている。
そのために企業の中で現在どんなAPIを利用しているのか、そのAPIでどんなシステムとつながっているのか、どこのウェブサイトとデータをやり取りしているのか、誰も把握できない状況にもなりかねない。Morrison氏に「APIが混乱していることにやっと気付きました」と話す最高情報責任者(CIO)やセキュリティの担当者がいたという。
CA Technologiesが提供するLayer 7は、そうしたAPIをコントロールすることが目的だ。「APIにガバナンスのレイヤを設ける」(Morrison氏)のがLayer 7になる。