東芝セミコンダクター&ストレージ(東芝)は、画像認識SoCプラットフォーム上での自動車向けアプリケーションソフトウェア開発に、大規模組み込みシステム向けフルシステムシミュレータを利用し、これまでの2倍以上の性能向上によって生産性を向上した。ソフトウェアを提供する米Wind Riverが現地時間の4月14日に発表した。
東芝が採用したのは、Wind Riverの「Wind River Simics」。開発ターゲットを仮想プラットフォーム上に再現し、実際と同じバイナリを実行することでシステム全体をシミュレートするシステムだ。テストやデバッグを格段に早い段階で実施できるほか、不具合挿入、システム内のあらゆる要素の検査、正確で再現可能な逆実行といった独自機能によって開発効率を向上する。
このSmicsを、東芝は画像認識SoC「Viscontiファミリー」のソフトウェア開発に採用、先進運転支援システム(ADAS)用として、複数の車載カメラの画像データを処理し、対象物やその動きを検出、認識し、運転支援や警報を発するといったアプリケーションの開発に用いた。Smicsは、東芝がこれまで使っていたシミュレーションソリューションと比較して、2倍以上の性能向上を示したという。
近年では、自動車の高機能化やネットワーク化が急速に進んでおり、オートモーティブ機器の要件は複雑化の一途をたどっている。その結果、オートモーティブ機器向けソフトウェア開発の遅れのリスクが高まっている。Smicsはシミュレーションを加速し、従来より早い段階に障害を予測できるほか、デバッグ上の難題も簡単にテストし、解決できるようにすることで開発、テストのサイクルを短縮。これまでよりも柔軟に、開発プロセスのリスクやコストアップの懸念を最小限に抑えられるという。
東芝の電子デバイス&ストレージ営業センター 技術マーケティング統括部 部長附、鷺直和輝氏は、Smicsに関して次のように述べている。「高度な自動車アプリケーションの複雑性を考えれば、開発プロセスの遅れにつながるリスクは多数ある。車載環境におけるソフトウェアの役割の拡大も、複雑さに拍車をかけている。Simicsには、開発課題に先手を打てる機能が備わっていると評価した」