富士通の海外でのUNIXサーバ事業が伸び悩んでいる。背景には、販売パートナーである米Oracleとスムーズに連携できていないことがあるようだ。
決算会見で苛立ちを見せた富士通社長
「そう簡単にすぐサヨウナラとやめるわけにはいかない」――富士通の山本正已社長は先ごろ、同社が開いた2013年度(2014年3月期)連結決算の発表会見で苛立ちを見せながらこう語った。決算内容については関連記事の通り、概ね好調だったが、その中でシステム製品の売上高が為替の影響を除くと前年度並みにとどまった。その大きな要因が海外でのUNIXサーバ事業の伸び悩みにあるということで、記者から今後の展開を問われた山本氏が言い放ったのが冒頭のコメントである。
富士通 代表取締役 社長 山本正已氏
誤解のないように前後の発言も記しておくと、「サーバ事業については現在、オープン化ニーズの拡大に伴ってx86サーバを中心に展開しており、成果も着実に上がり始めている。とはいえ、UNIXサーバも長年培ってきた技術を保持していることから、そう簡単にすぐサヨウナラとやめるわけにはいかない。まだ道は開けると考えているので、もう少し踏ん張りたい」というものだった。
聞きようによれば、もう少し踏ん張ってみてラチが明かなければやめるかも、と受け取れなくもないが、そうした勘ぐりはさておき、海外でのUNIXサーバ事業が伸び悩んでいる理由に目を向けると、販売パートナーであるOracleとの協業関係に暗雲が漂い始めている状況が浮かび上がってきた。
うまく行かないOracle営業部隊との連携
事の経緯を紹介しておくと、まず富士通が2013年1月にハイエンド向けの「SPARC M10」というUNIXサーバの新機種を発表した。SPARCサーバについて同社はOracleとグローバルアライアンスパートナーを組み、Oracleが買収したSun Microsystemsの時代から国内でOEM販売してきた。そうした関係から、富士通が開発したSPARC M10についてもOracleが販売パートナーとなり、日本以外で営業活動を担う手はずになっていた。
だが、この連携がこれまで思惑通り進まなかったことが、海外でのUNIXサーバ事業の不振につながった。その理由としては、アプリケーションの動作確認やマニュアルの整備などの作業が遅れていることが指摘されていた。が、最大の要因はどうやらOracleの営業部隊との連携体制がうまくとれていないことにあるようだ。つまり、Oracleの営業部隊が動いてくれないと、実績が上がらないのである。
ところが、Oracleも同じ時期にSPARCサーバの戦略製品として、ミットレンジ向けの「SPARC T5」とハイエンド向けの「SPARC M5」を市場投入。さらに9月にはM5の上位機「SPARC M6-32」も投入していることから、SPARC M10の販売にどこまで力を入れるかは不透明なところがあるのだ。
そうした中で、富士通とOracleは今年4月、従来に比べて約30%性能を強化した新型SPARC M10を全世界で販売開始すると連名で発表した。この新型SPARC M10の投入によって、山本氏の言う通り「道は開ける」方向に進むのか、はたまた両社の協業関係にヒビが入り始めるのか。
両社の関係はこれまで、お互いにそれぞれが開発した製品を融通し合う一方で、ぶつけ合ってきた感じがある。そうした中で筆者が印象に残っているのは、富士通が2013年1月にSPARC M10を発表した際、同社の幹部が語った一言だ。
「富士通とOracleの技術を結集し、UNIXサーバ市場で先行するIBMを打ち負かしてトップシェアを獲りたい」――最近の両社の関係には、この熱い思いが感じられない。UNIXサーバをめぐる話だけなら、大きな広がりは期待できそうもないが、IBMをはじめとした競合を打ち負かすために両社が今後どう動くか、注目しておきたい。