CFOがアグレッシブに企業変革
CFOの調査でまず注目されるのが、多くのCFOが組織をオープンにし、透明性を高めなければならないと強く意識していることだ。これは、高業績企業では64%のCFOが意識しており、低業績企業でも41%を占める。
「従来の財務経理担当役員というイメージで捉えると、すこし意外な結果とも言えますね。CFOの課題の中で、最も現実とのギャップが大きく、頭を悩ませている問題が“企業横断での情報統合”でした。CFOは、財務情報と非財務情報を統合して、組織を横断した“唯一の事実”を生み出そうとしていることが分かります」(斉藤氏)
また、調査に対応したある消費財メーカーのCFOはこんなコメントを残している。
「われわれは組織内の既成概念の打破にチャレンジし、新しいオペレーションモデルを模索している」
池田氏がこの点について補足した。
「高業績企業のCFOは、ビジネスモデルのイノベーションと事業買収、売却を含む組織の構造変革の推進において、主要な役割を果たしていることが分かりました」
今や、CFOは事業買収、売却といった意思決定の材料をCEOに提出して助言するだけでなく、ビジネスモデルの変革にも積極的に参加している。特に高業績のCFOは、低業績と比較して2倍以上もそれらの傾向が強い。ビジネスモデルの創造に貢献できるか、CFOの力量が試されている時代とも言えるだろう。
CHROは新しい時代のリーダー育成を目指す
CHROは人事、教育担当役員ということだが、彼らも顧客体験の重要性を強く意識していることが明らかになった。多くのCHROは、新しい顧客接点の構築には「ビジネスパートナーやサプライヤーとのコラボレーション」が欠かせないこと、そこでの顧客体験の創造には「現場社員の自律的な行動」が鍵となると理解している。それにともない、新しいリーダーシップを持った人材の育成が必要だと考えていることもわかった。
「ある金融企業のCHROはこんなコメントを残しています。“当社の人事部の役割は、専制型ではなく協働型リーダーシップを促進すること、新しい業務管理の仕組みを導入すること、それを組織に浸透させることである”。かつての“伏魔殿”のようなイメージから、社内組織のオープン化を積極的に促進する役割へ。人事部にも確かにイノベーションが押し寄せているのです」(斉藤氏)
また、今回の調査で多くのCHROが給与計算、教育研修などの一般業務のアウトソーシングを計画していることが判明した。外部企業に任せられる業務はどんどんアウトソーシングし、最も重要で、しかも時間がかかる「協働型リーダーシップ」の育成に注力していく意思をあらわしているようだ。
CSCOの役割は透明なサプライチェーンの構築
サプライチェーンを統括管理するCSCOも、組織のオープン化と社内外のコラボレーションを志向する傾向が強いことが分かった。
サプライチェーンは企業に重要な情報をもたらすが、多くのCSCOは自社のサプライチェーンから得られる情報をオープンにし、外部企業とのコラボレーションに活用すべきだと考えている。
「知識を独占することが力であり、そうすれば世界を救うスーパーマンになれるなんて考えるべきではない。我々は互いに協力して透明なサプライチェーンを築くべきである」(コンピューターサービス企業CSCO)
「われわれの最大のチャレンジはモノを運ぶことではなく、情報を運ぶことである。製品を輸送する前に、正しい情報をチャネルごとに適切な場所に配置しなければならないのだ」(消費財メーカー CSCO)
一方で、CSCOは現状のサプライチェーンとマーケティング戦略の連携に不満を抱いている傾向が強い。逆にこの統合が進めることで、市場分析の正確さが増し、顧客接点の構築にも大いに役立つはずだ。