スイッチなどのネットワーク機器をより扱いやすくしようとするSDNのコンセプトは、ストレージの領域にも応用されている。ソフトウェア定義ストレージ(Software Defined Storage:SDS)だ。
日本IBMは5月20日、SDS製品として「IBM Storwize V7000」「IBM System Storage TS4500 テープ・ライブラリー」「IBM DS8870 Flashエンクロージャー」を発表した。6月6日から順次出荷する。米国では5月12日に発表されている。
ストレージ仮想化を軸に、リアルタイム圧縮、柔軟な階層化やミラーリング、情報に高速にアクセスするための機能が強化され、ストレージにかかるコストの削減と同時に性能向上を図っており、ビッグデータ分析やクラウド基盤を支えるための用途を想定している。
日本IBM システム製品事業本部 ストレージ・セールス事業部長 波多野敦氏
日本IBM システム製品事業本部 ストレージセールス事業部 ストレージ・ソリューション・エバンジェリスト 佐野正和氏
Storwize V7000は、圧縮機能「IBM Real-time Compression」と自動階層化機能「IBM Easy Tier」が強化された。Real-time Compressionでは、圧縮専用のハードウェアアシストエンジンで「本番、バックアップのデータをリアルタイムに圧縮でき、圧縮スピードは従来比で10倍になり、データの圧縮率は最大80%に達し、平均でも55%。ストレージコストを大幅に削減できる」(日本IBM システム製品事業本部 ストレージ・セールス事業部長 波多野敦氏)という。
Easy Tierでは、データの使用頻度に即し、高速フラッシュからハードディスクドライブ(HDD)、テープまでの3階層でデータを自動的に最適に配置し「データ経済性の最適化とI/Oスループットを改善」(同社システム製品事業本部 ストレージセールス事業部 ストレージ・ソリューション・エバンジェリスト 佐野正和氏)している。ノードあたりのコア数は従来の4から8となり、接続できる最大の拡張筐体は、同じく9台から20台に増加した。税別の最小構成価格は855万円から。
System Storage TS4500 テープ・ライブラリーは、クラウド、データセンターなどの大規模用途向け。従来製品と同じ設置面積でのストレージ密度を約3倍にしており、最大4フレームで14.2Pバイトのデータ容量を持つ。テープドライブとして、業界標準のLinear Tape-Open(LTO)Ultrium 6、LTO Ultrium 5、IBM TS1140をサポートしているほか、フレーム上部に10Uのラックスペースを設け、SANスイッチやサーバなどを収容でき、ストレージ占有スペースの削減とケーブル配線の簡素化などを図っている。税別の最小構成価格は1344万7400円から。
DS8870 Flashエンクロージャーは、設置面積を50%削減するとともに、電力消費量を12%低減化し、ソリッドステートドライブ(SSD)の性能を最大4倍まで向上という。構成は、高い処理性能を要するシステムに適したオールフラッシュ、適材適所のパフォーマンスを提供できるハイブリッドフラッシュ、ディスクから選択できる。IOPS(I/O per Second)は、HDDと比べ最大4倍、SSDと比べ同4倍になるという。
経営資源としてデータは重要
63%の人々は今後数年間でモバイルショッピングにシフト(Latitude Research調査)。40%の人々は対面よりもオンラインでのつながりを志向(Views from 590調査)という事実が明らかになっている。
波多野氏は、これらの統計を引用し「近年、モバイル端末やソーシャルメディアの影響で人々の発想や行動が大きく変化している中、新たな経営資源としてのデータの重要性が高まり、競争力強化に向けた洞察獲得が経営者の最大の課題となってきた」と話す。
IBMが全世界750社を対象に調査したところ、クラウドコンピューティングやアナリティクス、モバイル端末、ソーシャルメディアの拡大に対応できている企業は10%未満であり、企業の70%は競合優位を実現して利益を生み出すためにはITインフラが重要な役割を果たすと認識しているという結果となった。
だが、効率に優れた社内基盤を構築していると回答した企業はわずか20%。大規模なデータを活用するため、これらにより高速にアクセスする基盤の構築が必要になってきているものの、ストレージへの投資は必要以上に増大させるのは困難との状況が一般的だ。「無尽蔵ともいえるデータを一定のIT予算以内で活用したいとの要望」(波多野氏)が出てきている。
ソーシャルメディアに代表されるような“新世代アプリケーション”を扱う場合のストレージに求められる要件として、IBMは動的統合や即時対応、自動最適化を挙げる。ここで中核となるのは「Elastic Storage」と呼ばれる技術思想だ。
ストレージを仮想化し、複数のシステムやアプリケーションにより、共通のストレージプールを共有することで、アプリケーションの修正やストレージ管理アプリケーションの追加不要で、データへの透過的なグローバルアクセスが可能になるという。
波多野氏は「今回の新たな技術はデータの経済性を変革する。リアルタイムでのデータ圧縮で平均で55%の削減を実現した。たとえば、1Pバイトのデータ容量が必要な場合でも、500Tバイトですむ」と指摘。IBMのSDSが、性能向上とコスト削減という課題を解消するための有力な方策であることを強調した。