SAPが米フロリダ州オーランドで開催している年次ユーザーカンファレンス「SAPPHIRE NOW + ASUG Annual Conference」の2日目となった6月4日、インメモリデータベース「HANA」を広く普及させるため、大手ITベンダーやスタートアップと幅広い協力関係を結んでいくと発表した。これにより、顧客が持つシステムを単純化し、開発や運用がしやすく、サポートの充実した環境を実現することで、顧客のイノベーション実現を促したいとしている。
具体的には、Red Hat、IBM、HP、VMwareの名前を挙げ、これに新興企業と提携する取り組みも加えた。
Red Hatとは、HANAを稼働させる認定OSとして「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)」を追加することで合意。ここでは、IntelのCPUで22nmの製造プロセスを実現した「Ivy Bridge」もサポートする。さらに、RHELを「Amazon Web Services(AWS)」上で稼働させることも明言。これにより、パブリッククラウドでの運用が可能になる。
IBMとは、RISCプロセッサ「POWER7+」と先頃発表された「POWER8」を含むPower Technology上でHANAが稼働するようにするため、緊密な協業を結ぶ。この日は、「Suse Linux」上で制限付きの評価プログラムを提供することを明らかにした。大量データの処理を想定して設計されているPowerシリーズとHANAは良い組み合わせだとしている。
HPとSAPは「ConvergedSystem 900 for SAP HANA」が既に認定されており、単一のメモリプールで12Tバイトのデータを扱う基幹系システムを運用できるという。
両社はこの取り組みを「Project Kraken」と呼ぶ。ConvergedSystem 900 for SAP HANAは、さまざまな種類にわたる大量のデータでも1つのシステムから管理、分析できるようにし、ビジネスにおけるリアルタイムの意志決定を目指せるようにする。
VMwareとは、一定の条件でHANA上で複数の仮想マシンを稼働させるシナリオを提出する協力関係を結ぶ。現在でも、単一の仮想マシンなら「vSphere 5.5」で稼働させる方法が普及しているという。これにより、ユーザー企業は、データセンター環境をよりシンプルにし、サービスレベルを上げる一方で、トータルコストを下げることを期待できる。
SAPは、新興企業向けの取り組みとして「Startups Offer Solutions Powered by SAP HANA」を実施している。これは、従来は利用が考えられなかったような新興企業が、HANAを使いやすくするためのものだ。
現在のところ、1500以上の新興企業が参加し、複数の業種にまたがり100以上の認定された製品が提供されている。今年はすでに20以上の企業が、この新興企業から製品やサービスを購入しており、売り上げは1000万ドルに上っているとのことだ。
エコシステム普及のためにSAPは「HANA Marketplace」を展開。顧客がHANA Cloud Platform上のさまざまな製品を購入したり、パートナーがこの場で販売できるようにする。