オムニチャネルというワナ

オムニチャネルはチャネル統合のことではない - (page 3)

伊藤圭史

2014-06-16 07:30

オムニチャネルとは「お客様の変化への対応」

 では、オムニチャネルをどうとらえればいいのか。私はお客様に聞かれた際には「スマホを持ったお客様のショッピングスタイルに対応すること」とお答えしています。

 明治時代に始まったというショッピングは現在に至るまで日進月歩で変化を遂げてきました。ただ、その中でずっと変わらなかったことがあります。

 「1つのチャネルですべての購買プロセスを終える」というショッピングスタイルです。実店舗で商品を見つけて、レジで買って持ち帰る。通販であれば、通販カタログを見て通販の物流に乗って商品を受け取る。このようなショッピングスタイルが実に100年以上も当たり前のこととして認識されてきました。

 このショッピングの常識がスマホやITの定着により大きく変化し始めています。スマホを手にした顧客は「家電量販店で見て、スマホで価格を比較し、ネットで買う」といった「複数のチャネルを横断する購買プロセス」、すなわちオムニチャネル型のショッピングスタイルをとるようになりました。

 私はオムニチャネルの取り組みの原点はこの変化にあるのではないかと考えています。すなわち、お客様の買い方が変わったのだから売り方も変えなければならない。その方法論の1つがオムニチャネルである、というとらえ方です。

実用性観点でのオムニチャネルの定義
実用性観点でのオムニチャネルの定義

 これくらいラフにとらえた方が実際にものごとを動かすという意味ではいいのです。論ずるべきことは「スマホを持ったお客様にどう対応するか」。

 このような考え方に基づき、顧客とのプロジェクトは「スマホを持ったお客様にどう対応するか」の一点に絞って議論を開始します。

 結果として、チャネル統合に関する意見以外に「販売員のコーディネートを発信する」「スマホで保証書を扱えるようにする」といったチャネル論に限らない意見が湧き出てきます。それでは、オムニチャネル構想と呼べるものにならないと言われるかもしれませんが、私は、それはそれでいいのではないかと思っています。大事なのは理論ではなくお客様なわけですから。

 本稿はあくまでも私見に基づくものです。オムニチャネルに取り組まれる際には、このような考え方もあるということを頭の端に置いてみていただければと思います。

伊藤圭史(いとうけいじ)
Leonis&Co.共同代表
上智大学卒業後、IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)に入社。デジタルマーケティング施策推進、CRMシステム導入など、顧客政策を中心とした戦略・システムプロジェクトに従事。2011年12月にオムニチャネルに特化してシステムとコンサルティングサービスを提供するLeonis & Co.を設立。オムニチャネルの専門家として通信会社や百貨店、電鉄など様々な企業を支援。

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