東京地下鉄(東京メトロ)が先頃、全線の列車位置や遅延時間などの情報をオープンデータとして公開し、同データを活用したアプリの開発コンテストを実施すると発表した。この機に、オープンデータ活用の可能性とリスクについて考えてみたい。
東京メトロが「オープンデータ活用コンテスト」を実施
東京メトロが8月19日に発表した「オープンデータ活用コンテスト」は、同社創立10周年を記念した事業で、募集期間は9月12日から11月17日まで。募集要項は、東京メトロ10周年スペシャルサイトに開催されている(図参照)。
東京メトロが開催する「オープンデータ活用コンテスト」
東京メトロがオープンデータとして公開するのは、列車時刻表、駅別乗降人員、バリアフリーに関する情報、全線の列車位置、遅延時間、始発の行き先駅、車両の所属会社など。これらのうち、列車時刻表、駅別乗降人員、バリアフリーに関する情報は既にウェブサイトで公開しているが、列車位置、遅延時間、始発の行き先駅、車両の所属会社などを公開するのは、日本の鉄道事業者として初めてという。
国土交通省記者クラブで発表会見に臨んだ東京地下鉄の村尾公一常務取締役は、同コンテスト実施の狙いについて、「オープンデータをインフラの1つとして捉え、外部にアプリ開発を委ねることにより、革新的なサービス向上を図る」「鉄道事業者として初となるオープンデータを、社内におけるサービス向上の動きを加速させるための起爆剤とする」「2020年の東京五輪を見据え、世界的なオープンデータの動きへの対応策の一環として各種ノウハウの取得を図る」といった3点を挙げた。
会見には、同コンテストで審査などの技術協力を担うYRPユビキタス・ネットワーキング研究所の坂村健所長(東京大学情報学環教授)も同席し、「オープンデータを活用することによって、われわれが思いつかないようなアイデアが出てくる可能性がある」と今回の取り組みに期待を寄せる一方、「日本でオープンデータがもっと活用されるようになるためには、東京メトロのようなイノベーティブな企業がいくつも出てくることが重要だ」と訴えた。