行政が注意すべきオープンデータのガバナンス
行政や企業が保有する情報を誰もが使いやすい形で公開するオープンデータは、特に公共機関が保有する地理空間情報や防災情報、統計情報などを有効活用することで、新たなサービスやビジネスの創出につながる可能性があると期待されている。
ただ、日本はかねて欧米に比べてそうしたオープンデータ化の動きが鈍かったことから、ここにきて安倍政権がIT政策として重視するようになり、さまざまな取り組みが行われるようになってきた。今回の東京メトロの取り組みはそうした流れを汲んだものといえる。
新たなサービスやビジネスの創出への可能性に期待が高まるオープンデータだが、もちろんリスクもある。まず挙げられるのが、プライバシー保護やデータの改ざんやねつ造といったセキュリティへの対応だ。オープンデータになって甘くなることのないよう、細心の配慮や注意が必要である。
オープンデータを使った社会的に問題のあるアプリが出てくる可能性もある。そうならないように、オープンデータ提供者とアプリ開発者の間でデータ利用許諾規約を明確にする必要がある。ちなみに今回のコンテストについても、東京メトロはその規約をきちんと打ち出している。
もう1つ、リスクとして挙げておきたいのは、オープンデータそのもののガバナンスである。今回のコンテストでは、データのガバナンスを担うのは東京メトロなので問題ないとみられるが、例えば、政府と自治体の間をまたがって利用されるようなオープンデータの管理責任はどこが持つのか。オープンデータを保管するクラウドがばらばらな状態になったとき、きちんとガバナンスを効かせることができるのか。行政サイドではこうした懸念についても検討されていると思うが、敢えて指摘しておきたい。
とはいえ、坂村氏が会見で語った「われわれが思いつかないようなアイデアが出てくる可能性がある」との見方には、全く同感だ。オープンデータの活用がビジネスや社会に貢献する可能性は大きい。だからこそ、リスクヘッジもしっかりと行っておきたいところである。

東京地下鉄の村尾公一常務取締役(右)とYRPユビキタス・ネットワーキング研究所の坂村健所長