jig.jpは、福井県鯖江市に本拠を置き、モバイルアプリを事業の柱とする企業。企業としてオープンデータを推進し、鯖江市と共同で「JK課プロジェクト」を展開するなどの取り組みでも話題となっている。同社の代表取締役社長である福野泰介氏に、アプリ開発やウェアラブルの可能性、オープンデータへの取り組みなどについて話を聞いた。
セマンテックウェブの可能性
--jig.jpとはどんな企業か。
jig.jp 代表取締役社長 福野泰介氏
jig.jpが注力している分野は携帯電話、スマートフォン向けアプリ開発、オープンデータの3つです。モバイルに特化してアプリを提供する会社として、2003年に創業しました。当時は“ガラケー”しかない時代でしたが、ケータイのアプリは起業前から注目していました。ケータイは毎年新しい機能が増えて、性能が上がっていき、その速度はBtoBtoCのスキームでは追いつかないほどでした。
そこで、その時点で最良のものをタイムリーに提供したいという思いからjig.jpを設立しました。まだパケット定額制のない時代だったため、パケット量を抑えて高速にブラウジングできる「jigアプリ」を発売しました。翌年、パケット定額制のスタートと直後にリリースしたPCサイト閲覧できる「jigブラウザ」を発売しています。特に、ユーザーの要望を取り入れて短いサイクルで機能の追加と修正を繰り返したことが評価される要因だったようです。
しかし、スマートフォンが出てきて岐路に立つことになります。スマホ向けのブラウザでは思うような差別化ができなかったためです。そこで勉強をしようとW3C(World Wide Web Consortium)に入りました。W3Cは、ウェブを発明したTim Berners-Lee氏が作った組織なので、そこで日本初の仕様とともにグローバルに展開するのもありではないかと思ったのです。
W3Cの活動は、2010年にはHTML5が盛り上がっていましたが、Tim本人は全く興味を持っておらず、英国政府とのオープンデータの取り組みをしきりに訴えていました。違和感を感じてEガバメント(電子行政)のセッションを聞いたら、どうやら「セマンティックウェブ」(ウェブページや記述内容を、それが何を意味するかを表すメタな情報を一定の規則に従って付加し、コンピュータが情報を収集、解釈しやすくする構想)をやろうとしているようで、Timの執念を感じました。
オープンデータは英米では進み始めていましたが、日本では全く進んでいない状況でした。日本のW3Cのサイトマネージャーである一色正男氏と協力し、ゆかりのある福井県の鯖江市から、オープンデータの取り組みをスタートしました。
一方で、スマートフォンアプリ開発も手がけています。オープンデータで新しいウェブ社会に関する布石を打って、それがトータルでより便利なツール作りにつながっていくことを想定しています。
--メガネ型のウェアラブルに注力しているが、その理由は。
jig.jpは、「利用者に最も近いソフトウェアを提供し、より豊かな社会を実現する」を企業理念に掲げています。利用者に物理的にも心理的にも近いハードウェアというと、PCよりケータイやスマートフォン、さらに近いのがメガネだと思います。
私は「Google Glass」を持っていますが、かけていてとても便利です。写真を撮ったり時計を見たり、またスケジュールなどの情報が常に視界の中にあるので、移動中にすぐに確認できます。ウィンクするだけで写真を撮影できることも便利ですね。
通知機能も充実しています。革新的なのは、スマートフォンでは煩わしい通知が邪魔にならないこと。バッテリの制限から何でも情報を送るわけにはいきませんが、バッテリの問題が解決されれば、あらゆる通知をさりげなくテロップで表示できますし、気になったものは詳しく見ることもできます。また、そもそもメガネしている人としていない人でまったく感想が違います。
普段メガネをかけていない人は「なんでわざわざ」となりますが、かけている人はかけるものが違うだけで手間がかかりません。充電の手間はありますが、充電する場所が決まっているのでメガネを探す手間も省ける利点があります。ただ、米国は治安上「高価なGoogle Glassをつけて街を歩くのは危険すぎるから難しい」という話は聞きます。安心してGoogle Glassをかけられるのは日本だけかも知れません。