1120億ドル規模の大手通信事業者であるNTTグループが、野心的な計画を明らかにした。グローバル通信インフラ分野における強み、ITサービス部門への積極的な投資、そしてシリコンバレーにある研究センターであるNTTイノベーションインスティテュートで生み出されるテクノロジやサービスの早期の収益化を生かした拡大計画だ。
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パロアルトにあるNTTの研究開発センターで行われた、この新しい戦略に関するブリーフィングに参加したジャーナリストは筆者だけだった。同社の担当者は、2016会計年度末(2017年3月)までに海外事業の年間売上高を2014年度の予想である150億ドルから、33%という大幅アップの200億ドルまで成長させるという野心的な計画を披露した。
この成長の鍵になるのは、米国でのITサービスの買収と、シリコンバレーの研究センターで開発される新たなアプリやテクノロジだ。
静かなる巨人
NTTは巨大な企業だ。同社は79カ国で24万人の従業員を抱えており、196カ国で通信サービスを提供している。Fortune 500では53位に位置し、顧客にはFortune 100企業のうち80社が含まれる。同社は50カ所以上のデータセンターを運用しており、これはデータセンターの数で世界2位にあたる。また、グローバルなIPバックボーンでも2位に位置し、海底ケーブルでもトップ10に入っている。
2008年以降、NTTはDimension DataやKeane、Solutionaryなど海外でいくつもの重要な買収を行っている。2011会計年度から2013年度までは、114億ドルから122億ドルと数年にわたって緩やかな成長しかしてこなかったが、同社はこれらの投資を生かして、急速な拡大を目指そうとしている。
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NTTグループのグローバルビジネス推進室長で取締役の奥野恒久氏は、同社の成長戦略の核は、ハイブリッドITやクラウドコンピューティングプラットフォームの複雑さを扱いかねている大企業で予想される、グローバルクラウドサービスとITサービスへの需要の増大だと語った。
NTTによれば、同社はあらゆる種類のグローバルビジネスに必要な、通信インフラとデータセンターサービスのフルスタックを持っている。また、同社は新たなテクノロジを開発中で、これにより複数のデータセンターと通信ネットワークを管理可能なフルセットの事業運営システムに加え、電子商取引や、さまざまなデータセンター、デスクトップアプリ、モバイルアプリを横断的に利用した事業運営を支えるアジャイルソフトウェアインフラを提供する予定だ。これは非常に大きな展望だ。
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また計画だけではなく、開発スケジュールも野心的だ。NTT Americaの社長である五味和洋氏は、NTTは同社がシリコンバレーに持つ研究センターの応用テクノロジをわずか18カ月で収益化する予定だと述べた。
同氏は、新たなビジネスを勝ち取り、10億ドル規模のクロス販売の機会を生かすには、Data Dimension、Keaneなどの米国内にある事業グループ間の協調が重要だと話した。「当社は大企業向けITのフルスタックを持っており、大企業の拡大を支援できるグローバルな広がりがある。それこそ、当社が他社と差別化できる部分だ」