NTTによれば、ITサービス部門でのNTTの最大のライバルはIBMだが、NTTはIBMの先を行っているという。IBMはそのギャップを埋めようとしているものの、NTTはグローバルな通信インフラと50カ所以上のデータセンターを持っている点で有利だという。IBMまた、自社のハードウェア製品とソフトウェア製品を販売する必要に縛られているが、NTTはベンダーの都合ではなく顧客のニーズに合わせて幅広い製品を提供しサポートできる。
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シリコンバレーにあるNTTイノベーションインスティテュートの最高経営責任者(CEO)Srini Koushik氏はIBMを熟知している。同氏はIBMの元上級役員兼IBMフェローであり、Hewlett-Packardのワールドワイド戦略サービス事業の責任者だったこともある。Koushik氏は同組織の100人の研究者が、NTTの年間25億ドルを超える研究開発費を素早く収益化し、重要なエンタープライズ向けテクノロジを開発することに自信を持っている。
「今やすべての企業がデジタル企業であり、これは企業が規模の変化に対応できる、安全で、柔軟なエンタープライズテクノロジとサービスを必要としていることを意味している」と同氏は話す。
同氏は研究者たちをセキュリティ、スケーラブルコンピューティング、機械学習の分野における商用アプリケーションの開発に集中させている。Koushik氏は、大規模なデジタル事業では膨大な量のデータが生成されているのに加え、将来センサーデータやマシンのログの洪水が起こるため、この規模のデータの監視と、データからの学習を自動的に行えるシステムが必要とされるようになると語る。
同氏は現在のテクノロジと、シリコンバレーのセンターで開発中の新しいテクノロジの特許を申請することで、NTTの知的財産を増やす計画だ。こういったテクノロジの1つが、ヘルスケア分野で広く活用可能な(あるいは下着に使うことで高齢者介護で利用できる)、バイオメトリックセンサー付きの洗濯可能なシャツだろう。
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Foremski氏の見方は次のようなものだ。NTTの海外の事業グループに対する積極的投資は、ここ数年間緩やかな成長しかもたらさなかったが、この戦略が成功し、劇的に収益を増加させることができるかどうかは今後2年間で決まる。
ITサービス事業の成長は人の制約を受け、顧客の獲得には長い時間がかかる。NTTの課題は、いかに異なる事業グループのチームを効果的に協調させ、顧客のチャンスを特定し、複雑なITサービスに対する要求を満たすかにある。
もう一つの課題は、データセンターコンピューティング、ストレージ、通信技術の日用品化だ。ITコストが減少傾向にあるということは、企業向けのサービススタックが近い将来より安価で手に入るようになるということであり、顧客は一部の判断を先送りする可能性があることを意味している。ただしそれによって得られる経済性は、柔軟性の乏しいITシステムや時代遅れなプロセスを使い続けることによる機会損失と天秤にかけられる必要がある。
NTTグループは同社のITサービスを用いて事業グループや買収企業を統合しているが、野心的な収益目標を達成しようとするなら、顧客獲得とサービス開発のペースを上げるために、組織構造の再編が必要になるかもしれない。
NTTは、現在はまだ小さいが、エンタープライズ向けクラウド事業を拡大しつつあるGoogleなどの新しい競合相手にも目を配る必要がある。Googleは大規模なグローバル通信インフラとデータセンターネットワークを持っており、最近は米国とアジアを結ぶ海底インターネットケーブルを敷設するコンソーシアムに参加したと発表している。同社が持つ社内事業「スタック」は、NTTと似たものに見える。
しかし、Googleにはほかにも巨大な事業を持っている。検索を基盤とした広告事業は、スケーラブルコンピューティング技術の開発と展開において重要な要素であり、これが同社の商用ITサービスの基盤となっている。NTTは、同様の規模の経済を実現するだけの大きさの事業を持っていない。
同社が今後事業スタックを完成させるために、新たなインターネット企業の大型買収を行うかどうかはまだ分からない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。