インフォアジャパンは10月15日、クラウド型アプリケーション群「Infor CloudSuite」の提供を、日本市場で年内に開始すると発表した。Infor CloudSuiteはAmazon Web Services (AWS)上で展開する。
CloudSuiteは、業界に特化したSaaS型ERP「ソリューションスイート」、オンプレミスのERPをSaaSに移行させる「Infor UpgradeX」、必要な分析機能や特定機能だけをSaaSで提供する「Infor Analytics」、「拡張アプリケーション」で構成され、サブスクリプション型の料金モデルで提供される。
CloudSuiteでは各業界に特化したSaaS型ERP群として、「自動車業界」「中小企業」「ファッション業界」「食品、飲料業界」「製造業界」向けのERPを展開する。
オンプレミスで稼働しているインフォアの各ERPをSaaS上で展開するためのプログラムであるInfor UpgradeXでは、Infor 10xに対応しているため、最新の業種別機能や技術を利用できる。移行時の初期費用以降は、サブスクリプション型の料金モデルで提供する。具体的には「LN」「SyteLine」「M3」「Lawson」「EAM」などのラインをクラウド化できる。
業種ごとに特化したSaaS型ビジネスインテリジェンス(BI)機能を2014年内に7種提供する「Infor Analytics」のほか、顧客情報管理システム(CRM)や人材管理(HCM)などの機能を持つSaaS型アプリケーションを年内に11種提供するとしている。
SaaS型ERPをはじめ、これまでオンプレミスで動いていたインフォアERP製品群の一部をAWS上で展開し、利用できるようにする。
業界特化型クラウド企業を宣言
10月15日にユーザー向けに開催されたイベント「INFOR DAY」の冒頭、インフォアジャパン代表取締役社長の尾羽沢功氏は「2013年のイベントでは来場者が500人程度だったが今日は1000人規模のイベントを開くことができた」とあいさつした。
来場規模を倍にすることができたのは昨年比35%増という業績が大きいという。この業績を支えるのは業界ごとに事細かに対応した製品を展開する「マイクロバーティカル戦略」であると説明した。
米Infor 最高経営責任者(CEO)Charles Phillips氏
続いて米Inforの最高経営責任者(CEO)Charles Phillips氏が登壇。新規顧客が3000を超えたことや、SaaS領域での成長率が昨年比で70%増したことに触れ、好調の理由について「クラウドの利用要件が違うように、基幹業務システム(ERP)の利用要件や、課題も業界、顧客によって異なる。われわれは各業界のERPユーザーが求めるものを知っている」とアピールした。
Phillips氏は「業種特化型のスイート製品」「インターネットの標準アーキテクチャ」「利用者が喜ぶ体験価値の創造」などを基本戦略とし、「世界初の業界特化型クラウド企業」となることを宣言した。
この宣言を実現するために、海外ではすでに2600社、2500万人のユーザーが利用しているInfor CloudSuiteを、日本市場でも年内に順次提供を開始する。
インフォアジャパン代表取締役社長 尾羽沢功氏
Phillips氏はクラウドERPが求められている理由として、海外展開する企業が増えていることに言及し、「新規海外拠点で早期に立ちあげ、現行の基幹業務システムをクラウドで補強、高度化したい、もしくはその両方を組み合わせたニーズまで、企業の経営戦略やタイミングによって求められるものは変わる」と説明した。
また、CloudSuiteをはじめ、これまでオンプレミスで動いていたインフォアERP製品群の一部をAWS上で展開、利用可能にするなど、AWSとの強いパートナーシップを強調した。
ゲストとして登壇したアマゾン データ サービス ジャパンの社長を務める長崎忠雄氏は「AWSは日本でもすでに2万を超えるユーザーがいる。コストだけでなく、(予期せぬトラフィックへのリソースの自動配分などの)サイジング調整の速さ、セキュリティの高さもが評価されている」とし、ERPという基幹システムをAWSで運用することにも自信をのぞかせた。
Inforは2015会計年度から2016会計年度にかけて全売り上げにおけるクラウド関連の売り上げを25%とする目標をかかげ、クラウド型ビジネスへ注力する。
インフォアジャパンでも目標達成のために、“クラウドソリューション戦略部門”を新たに設置、CloudSuiteをはじめとするクラウドERPの展開に集中するための組織を編成するとした。
こうした戦略に加え、Inforが取り組むのは「ユーザー体験の向上」だ。(これまでデザインなどが後回しにされる傾向のあった)BtoBの領域であっても機能性ではなく、「体験価値」を重視しているとした。このため、Hook&Loopというクリエィティブエージェンシーを立ち上げ、ソフトを使う上で「生産性」「エラーを減らす」「(ソフト)習得時間の低減」の3つの基準に対応できているかを指標に活動していると話した。
Phillips氏は機能や顧客体験向上のための投資は惜しまないとし、業界ごとに展開する製品群をさらに洗練する点を強調していた。