T型フォードというイノベーション
サーバアプリケーションの仮想化環境移行サービスを提供する「appzero」の最高経営責任者(CEO)、Greg O'Conner氏は、今のクラウド業界が、自動車業界においてFordが完成度の高い大衆車「T型フォード(Model T)」を発表した時代に酷似していると指摘しています。

Model T
Model Tの製造コストに関する徹底的なイノベーションの末、1920年には200社あった自動車メーカーは、1940年にはたった8社に減少する、という現象が起きました。イノベーションについていけなかったメーカーが、短期間で次々と統合や合併、廃業に追い込まれたわけです。
データセンター業界においても、同様の動きが想定されるとこのアナリストは主張しています。その根拠として挙げられているのは、やはりイノベーションというキーワードです。データセンター事業という市場は、安定したサービスを提供することが命題であり、イノベーションがもともとのDNAに編み込まれていないという点を指摘しています。
「企業のデータセンターの従業員は、イノベーションがなくても誰もクビにはならない。ここがクラウドベンダーの従業員と大きく違うところ」と語っていますが、従来のホスティング、コロケーション事業の延長線上としてクラウド事業をスタートして、急にイノベーション指向の高いビジネスを推進できるのかどうか、その辺を現実的に見極める必要があるとデータセンター事業者にとってはかなり辛口のコメントです。
さて、現在のFortune 5000に入っている企業の保有しているデータセンターの数を合計すると、3万5000カ所あるといわれています。もし、自動車業界のモデル同様に、2030年までにデータセンターの数が90%減少したら、3万カ所のデータセンターがこの世からなくなることになります。
自動車とITは似て非なる業界ではありますが、イノベーションの力がいかに大きいか、その例として大変参考になるケースであると思いますし、IT業界にも同等のパラダイムシフトが起きているとは言えるのではないでしょうか。