--経験のないマーチャンダイズの知識は、どの程度の期間で身についたか。
人によると思います。マーチャンダイズはノウハウというより科学だと考えます。鮮魚の場合、例えば大トロと中トロは脂の量の差で分類されますが、その割合は決まっていません。すごく適当なんです。そういうことをどう整備していくか。もしかしたらITでどうこうというよりは、むしろ感覚や、物事の処理の問題かもしれません。
経験や勘で得られたものをしっかりデータベースに格納していって、平準化していく。それがITの一番大事にすべきことです。入社して3カ月や半年の人間がある程度の工程数を踏んでいったら、結果的にできてるようになってることと同じですね。情報の参照や処理、共有に関して、たとえばEvernoteなどのクラウドで以前より楽になったというのはITの進化です。われわれも同じで、ITの進化の恩恵を受けているわけです。
20年前からこういうことをしたかった人は山ほどいましたが、ザウルスなどのPDAではここまではできませんし、ガラケーでも無理です。しかし2010年からこの事業が可能になりました。2009年でもできないことでした。それは、2010年から世の中のツールがアプリ化してきたからだと思います。
--需要の予測はどのようにしているのか。
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前段として、特別なことはしていません。これからどんどんフェーズに合わせて、できる限りITに投資しながら、テクノロジの力を使って事業のフェーズを進めていきます。大事なのは、「それがどこに向かっていくか」です。例えば次世代サーバが、世間の食の嗜好性を理解して勝手に判断する場合、アルゴリズムは人が考えて、その処理を機械にやらせるだけです。まずはどういうデータを抽出するのかという考え方が大事で、われわれはまだそのフェーズです。
日々売ったもの、買ったものがトランザクションデータとして溜まっていきます。もしくは、そのトランザクションが発生しなかった原因のところにもさまざまなデータが発生します。それをどう読み解くか。デジタルではなかったものをデジタルにするということは、デジタルじゃないものはどういうデータになるのかを理解して、それを作り上げていくことです。
流通業では、当たり前のようですが、大事なのは、需要の移り変わりに対して提供できる品物を情報としてきちんと見せることです。そこから選んで買ってもらうという、やり取りです。このやり取りは電話でもできますが、より正確に、そして豊富かつ迅速な情報提供を展開しようとすると、やはりインターネットの力が必要です。
--今後の展望は。
今後は水産物以外の青果や精肉など、料理人が欲するさまざまな商品に対してカテゴリ範囲を広げていく予定です。またグローバルの展開も予定していて、いずれは世界のどこにいても、希少で珍しいものが普通に食べられるようにしていきたいですね。たとえば、サハラ砂漠で懐石料理を食べることが当たり前になるようにして「食文化が変わったな」と言われたいですね。