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山谷剛史の「中国ビジネス四方山話」

ネット新語「ディャオスー」に見る、中国人の日本人的幸福感

山谷剛史

2014-11-11 06:00

 ネット時代に登場した新語「ディャオスー」がある。漢字で書くと、※絲。※は尸(しかばね)に吊である。「魅力的でない人」、もう少し砕けた言葉でいえば「イケてない人」を意味する。このディャオスーという言葉は人を嘲笑するだけでなく、自嘲する言葉にもよく使われている。またディャオスーを自認するからといって人生を悲しんでいるということはなく、お金がないなりに生活を楽しんでいる、現代の中国人を表現する新語である。

 最近、赶集網と北京大学市場与媒介研究中心が共同で行った「ディャオスー」に関する最新の調査結果「2014ディャオスー生存現状報告」が発表された。これを読み解いていこう。

 ディャオスーとはどんな人か。年齢でいえば、20代、それも20代前半に集中する。月収は3000元弱(約57000円)と回答する人が多いが、5000元(約95000円)までの帯でもディャオスーだとする声も多い。その土地の平均所得を稼いでいる程度では自嘲するしかないようだ。物価が上昇する中国において、貯金額が給料数カ月分に相当する1万元(約19万円)に満たないならディャオスー、食費に関しても大衆食堂やファストフードで3食食べる程度の1日40元(約750円)内に収まってもまたディャオスー認定だ。スマートフォンが普及した今、フィーチャーフォンでなく、中国メーカー製の大音量が鳴るAndroidスマートフォンを持っていると、「安っぽいものを携えている」という理由でディャオスー認定となる。

 前回の記事で、中国のホワイトカラーは転職癖が抜けないことを書いた。しかし、転職を繰り返す人もまたディャオスーと認定される。中国では第1次産業や第2次産業で働く人が社会的に評価されないきらいがあり、やはりディャオスー扱いされがちだ。対極にあり、ディャオスーと縁遠く思われる職業が、メディアや投資企業勤務とならび、今の花形産業であるIT産業である。イメージのいい職業に就こうが、人間関係や仕事の多忙さに参ってしまえばディャオスー扱いだし、四川省出身上海勤務など、外地からやってきて働くだけでレッテルが貼られる。

 ディャオスーはお金が十分にないから、住む家も家賃の安い狭い部屋で、さらに節約のためにルームシェアをする。転職が当たり前の環境の中、外地人では将来の設計がしにくいので、家を買う予定も立てられない。

 ディャオスーは旅行や運動にも消極的だ。旅行消費の半数は郊外への旅行がせいぜいで、費用は年500元(約9500円)以下だ。平日にオンラインショッピングやSNSに没頭し、休日もまた睡眠やネットやゲームで時間を潰す。ストレスが溜まれば、酒よりもまず寝る。ディャオスーな生活状況であり風貌であろうと、恋愛関係を築いている人もいる。彼らは毎月交際費に500~1000元(約9500~19000円)程度費やす。ディャオスー同士の夫婦は、比較的喧嘩も少なく、夫婦ともに貧しいと認識しつつも、1人の子供を大学卒業まで支援したいという。

 iPhone 6などの転売や、銀座での買い物客、小笠原の珊瑚アクセサリーの需要などの報道から見るに、中国人の旺盛な消費ばかりが目に行く。しかし「ディャオスー」なるネットの新語と、それについての「ネットで安く楽しむライフスタイル」「清貧夫婦」といった具体的な定義を知るに、「若者の~離れ」が報じられる消費を抑える日本の氷河期世代・ゆとり世代・さとり世代の風潮と重なってみえる。

 調査は21万人から行い、ディャオスーだと自認する人とそうでない人からアンケートをとっている。回答では62%が自身が「ディャオスー」だと考えていて、38%はかくも高いハードルを越えて「ディャオスーではない」と自認している。大卒では自身をディャオスーと自嘲する割合が高いのに対し、中卒以下では自身をディャオスーだと思っていない割合が高い。またフリーランサーやサラリーマンでは自身をディャオスーと自認する割合は高く、国有企業や役所勤めの人はその割合が低い。

 もちろん中国人と一言でいっても、自信過剰・過大評価な人もいれば、自嘲・卑下する人もいる。この調査結果を見る限り、沿岸部の高学歴な人々は流行を知ったうえで、比較的冷静に自分の立場を分析するきらいがあるようだ。

山谷剛史(やまやたけし)
フリーランスライター
2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。

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