データセンターは課題のデパート
データセンターの運用や構築に携わっていないIT部門のかたにも、自社データセンターのマネジメントの現状を感覚的に把握していただくため、ここで1つ質問してみたい。
「サーバの稼働率やラックの空き状況、機器設置スペースの余裕の有無、電力の使用状況とコストを含め、最近数カ月のデータセンター全体の稼働状況が分かりますか?」
こう問われて「その程度ならすぐに回答できそうだ」と感じたら、貴社のデータセンターマネジメントは、それなりの水準にはあると言える。しかし、実際のところは「詳細まではよく分からないかもしれない」というケースが少なくないはずだ。
例えば、データセンターに設置したラック内にあるサーバのCPUやメモリー、ストレージのディスクの使用率などは分かったとしても、空調の消費電力量を含めデータセンターが消費しているエネルギーコストまで正確に把握しているIT部門は必ずしも多くない。
サーバの処理能力の増強やストレージ容量の増加、空調性能の向上など浮かび上がる課題に1つずつ対処しながら拡張してきたデータセンターは、あらゆるメーカーの機器と設備が混在するようになったこともあり、全体の稼働状況の把握が次第に難しくなってきている。
ただし、このことはデータセンターが抱える課題のほんの一部にすぎない。データセンターは今、規模を問わず、さまざまな課題に直面している。いうなれば課題のデパートだ。
経験豊富な担当者のノウハウに頼る部分が思いのほか多く、なかなか進まない運用標準化や高まらない運用効率に悩んでいるIT部門は多い。そんな中、インターネットを活用した商品やサービスの販売に顧客サポートなど、ITへの業務依存度が高まることによって高まり続けるデータセンターの可用性や拡張性への要求に応える必要がある。
さらに、電気料金の値上げに伴い、データセンターのエネルギーコスト圧縮のプレッシャーも強まっている。一連の課題の解決を目指してデータセンターの改善に取り組もうにも、サーバをはじめとするIT機器や空調などの設備ごとに導入時期や寿命が異なるため、「無駄のない最適解」を見出しづらくなっている面もある。