シビックテックの取り組みはボランティアが中心のため、仕事として関われる人材が少なく、自治体内部にITの専門家、オープンガバメントの専任者がいないという。
Code for Japan 関治之代表
「シビックテックでは、自分の関与したプロジェクトが地域の政策決定や予算編成に関わる可能性があることなどに魅力を感じて参加する地域住民が多い。地域住民や民間企業が地方自治に参画するオープンガバメント、オープンデータなどの取り組みではビジネスやITのスペシャリストが人材が不足している」(関氏)
こうした背景から、今回のコーポレートフェローシップは、シビックテックを推進できる人材を確保するという目的と企業が人材を育成するという目的を兼ねている。プログラムはSAPジャパンなどの協力を得ながら推進する。
企業とは異なる環境で仕事
コーポレートフェローシップのトライアルはSAPジャパンが福井県鯖江市で実施した。派遣されたSAPジャパンの奥野和弘氏は同市で「オープンデータ施策の分析」や、「市民主導によるアイデアソンの開催」などに従事。オープンデータを公開する手引きの策定やアイデアソンを定期的に開催できるようにする仕組み作りにも取り組んだ。
奥野氏は「横文字やITの専門用語を使うのが当然だった企業から文化的背景が違う環境で仕事をすることにより、コミュニケーション能力が磨かれた」と話した。
SAPジャパンで戦略を担当している村田聡一郎氏はコーポレートフェローシップが、グローバル企業の人事担当者から評価を得そうだと話す。現在多くの企業が欲している「グローバル人材」とは文化的背景が違う環境でリーダーシップを発揮できるかどうかが重要な点であるためだ。優秀な人材を海外に長期間派遣するのは経済的に難しく、業務の現場でも人手が少なくなることから、地方自治体に人材を派遣できるプログラムはリーダーシップを養うプログラムとして、費用と内容の面から手頃だと評価していた。
SAPはCode for Japanと連携しているCode for Americaのスポンサー活動の実績があり、日本でもインメモリデータベース「HANA」をオープンデータ活用の基盤として無償で提供するなど協力している。オープンガバメントやオープンデータに最前線で取り組むことが、製品開発やサービスの改善にも将来的につながると考えているとした。