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「Terms of Service」ブックレビュー:ビッグデータとプライバシーをマンガで描写

Mary Branscombe (ZDNet UK) 翻訳校正: 沙倉芽生

2015-01-23 06:00

 ネットで検索し、ウェアラブルデバイスを身につけ、写真をウェブに投稿する。こうした行為は、単にテクノロジを使っているだけでなく、テクノロジを作り上げることにもつながっている。ビッグデータの構築に貢献しているのだ。


Terms of Service: Understanding our Role in the World of Big Data ● 著者:Michael Keller & Josh Neufeld ● 出版社:Al Jazeera America ● 46ページ ● 無料(ePub、PDF、iTunes)

 フィットネスデバイスであるFitbitのデータが裁判で被告人の事故による影響を証明したりするような時代において、このマンガ形式で描かれた新書「Terms of Service: Understanding Our Role in the World of Big Data」(「サービス利用規約:ビッグデータの世界におけるその役割」の意)は、ビッグデータやデジタルプライバシーを考えるにあたって最適な書物といえよう。

 元米国副大統領のAl Gore氏とGoogleの共同創業者であるSergey Brin氏とLarry Page氏が、Gmailのユーザー情報収集に関する規制の策定を避けようとしていたことや、Foursquareでチェックインすること、Facebookでソーシャルライフを楽しむこと、ウェアラブルデバイスを使った運転の追跡で保険会社からの割引を受けることなどを考えてみよう。どこまでやるべきか考えておかないと、統計やリンク、プライバシーポリシーの波に飲まれてしまう。その一方で、こうしたややこしいものをわかりやすくマンガ化した書物を手に取り、よく理解してみるという方法もある。

 記者のMichael Keller氏とマンガ家のJosh Neufeld氏の共著による「Terms of Service」は、両氏をモデルとした「Michael」と「Josh」というキャラクターが、政治家や学者、研究者、学生、法律家を訪ね、追跡やプライバシーポリシーといったビッグデータ関連のことについて話すというストーリーだ。一風つまらなくなりがちな話題が、マンガ化されていることで生き生きと表現されている。

 Foursquareの履歴でユーザーの何がわかるのか、実際にその内容を見てみると面白い。Googleがユーザーのメールを読むロボットは自爆すると言っているのであれば、そのロボットは目の前で爆破するだろう。保険会社はなぜ車での旅行を追跡しようとするのだろうか。それは、通常の運転時よりも2倍正確に運転がうまいかどうか見極められるほか、事故で保険金を支払う可能性の低そうなドライバーに対し、魅力的な割引料金が提供できるためだ。いい話のように聞こえるが、保険のプール内でもう他人よりいい思いをすることもなくなるということだ。これは保険業界の新たな財務基盤で、すべての人にとっていい話というわけではない。健康保険も同じであればなおさらだ。

 Michael Keller氏はAl Jazeera Americaの記者で、データ収集が得意な人物だ。彼は過去に、保険会社Progressiveが提供するSnapshotというモニターデバイスに関する投稿を行ったFacebookユーザーを探し出してメッセージを送るというスクリプトを書いている。Josh Neufeld氏は、ハリケーンカトリーナを体験した実在する7人について描いた「AD: New Orleans After The Deluge」(「洪水後のニューオーリンズ」の意)というグラフィック小説が有名だ。同氏は自身をコミックアーティストではなく、コミックジャーナリストだとしており、ミシガン大学にてジャーナリズム特別研究員として1年を過ごした経歴がある。この2人の作品は、すぐに読めて考えさせられるものでありながら、難しくはない。最近よく見かけるニュースがよくわからないという人でも、この本は人にフォーカスしてその心配事を描いているため、ビッグデータの問題が個人的で自分にも関係のあることだと感じ、わかりやすくなっているのだ。

真面目なグラフィック小説

 グラフィック小説は娯楽として捉えられがちだが、過去10年の間に徐々に真面目な書物としての地位を確立しつつある。それは単に「Watchmen」がグラフィック小説として成功したからではない。

 Joe Sacco氏の「Palestine」(パレスチナ)は、同氏がパレスチナのガザ地区で体験したことを描いた真面目なグラフィック小説だ。一方、Art Spiegelman氏は、ユダヤ人大虐殺を生き延びた父親の経験談をまとめたグラフィック小説「Maus」にて、ピューリッツァー賞を受賞している(日本語版は晶文社が「マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語」として出版)。Spiegelman氏がのちに発表した「In The Shadow of No Towers」(「崩壊したビルの陰で」の意)で、911同時多発テロ事件が自身に与えた影響を語っているように、Marjane Satrapi氏は数々の賞を受賞した「Persepolis」(日本語版はバジリコが「ペルセポリス イランの少女マルジ」として出版)にて、自身の生い立ちをグラフィック小説化している。

 最近では、Mary Talbot氏とBryan Talbot氏夫妻が、作家James Joyceの娘と、Joyce研究者の娘として育ったMary Talbot氏自身について描いた「Dotter of Her Father's Eyes」(「父の視力を補う点字機」の意。Joyceは晩年、視力が衰えていた)にて、2012年コスタバイオグラフィー賞を受賞している。また、Jim Ottaviani氏とLeland Myrick氏が描いた伝説的物理学者のグラフィック伝記「Feynman」(ファインマン)は、すばらしいだけでなく面白い内容だ。マンガ化されていることで、物理学のコンセプトがとてもわかりやすくなっているのだ。

 テクノロジーの世界では、Scott McCloud氏が物語を語る方式でドキュメント化した「Understanding Comics」(「コミックを理解する」の意)と「Reinventing Comics」(「コミックの再構築」の意)が、ウェブデザイナーの間で影響力のある参考書となっている。ウェブサイトが単なる冊子からインタラクティブな体験を与えるものへと変化したためだ。Googleが「Google Chrome」のリリースに関するグラフィック小説をMcCloud氏に依頼したのも納得できる。

 さらに、Caleb Melby氏は「The Zen of Steve Jobs」(「スティーブ・ジョブズと禅」の意)にて、Appleの創業者であるSteve Jobs氏が、彼の友人である禅僧侶 兼 デザイナーの乙川弘文氏から受けた影響についてグラフィック小説化。Jobs氏の美に対するアプローチについて、他の一般的な伝記や映画よりもうまく解説している。

 「Terms of Service」は、ビッグデータと大きな差別について描いている点が興味深く、グラフィック小説の物語形式をうまく活用している。吹き出しが多すぎてすばらしいイラストが欠けているところも数ページあるが、通常の解説画像よりはずっと情報が充実しており、考えさせられるものになっている。さらに、ニュースサイトにて完全な注釈つきで無料で公開されていることも通常とは異なる点だ。同書は、オンラインプライバシーやビッグデータ、そして今後世界がどうなるかについて考えるべきだとは言っていないが、こうした問題を自問自答するよう促している。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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