Amazon Redshiftでビッグデータ分析基盤--スタートアップ企業を支援 - (page 2)

岡田靖

2015-03-12 06:00

社内の負担を大幅に軽減して拡張可能に

 そのためアップベイダーでは、設立当初から配信ログの管理や分析をRedshift上で実施することを検討していたという。資金的な都合で事業開始と同時には採用できなかったものの、遠からずRedshiftへ移行する前提でシステムを構築しており、2014年3月ごろにはRedshiftの利用を開始した。このとき同時に、ログを転送するために米FlyDataが提供する「FlyData AutoLoad」も採用している。

 これは、Redshiftに自動で継続的にデータ転送を行うクラウドサービスで、データの流れを手軽に設定、管理できるほか、転送エラー時にもデータを失わないといった特徴を備えたツールだ。また、生ログおよび集計結果の保管のためAWSのクラウドストレージサービス「Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)」も用いており、ここにも同じくFlyDataによりログを転送している。


アップベイダーのシステム概要図。
Key-Value Store(KVS)およびDBサーバが広告枠や案件を管理し、その情報をもとにアドサーバ群が広告を配信する。
配信ログ、および広告枠や案件のデータはFlyDataを通じてRedshiftへ送られ、集計結果をバッチでデータベースとKVSに回収、準リアルタイム情報として管理サイトから閲覧できるようにしている

 「FlyDataも、自社で同じような転送の仕組みを作るとなるとエンジニアを一人専任で置いておかねばならないことから、やはり必須と考えていました。Redshiftは、まだ成熟しきったとは言えず、自分たちでノウハウを蓄積していく余裕がありませんから、プロに任せたいと考えたのです。またS3については、われわれにとって広告インプレッションは一秒ごとにお金を生み出すもので、もし失われれば損失となるため、信頼できるインフラにデータを置きたかったのです」(佐野氏)

 さらに続いて、別のデータベースで管理していた広告枠および案件の情報も、同じくFlyDataのデータベース同期ツール「FlyData Sync」を用いてRedshiftと同期させ、一括してRedshift上で処理できるようにした。これにより、配信結果集計のバッチ処理時間は大幅に短縮されたという。

 チーフサーバサイドエンジニアの今村彰秀氏は「移行前はバッチ処理に数時間を要しており、ボトルネックになりがちだったのが、今は数分で済んでいます。FlyDataは、Redshiftを最も長い間扱っている企業の1つであり、その新機能にも追随しており、開発段階では質問にも一発で答えてくれました」と語っている。

 同社では日本の動画広告マーケットを成熟させるべく、今年を特に重要な年として位置づけている。数百%もの成長を見込んでいるという。この成長目標に対しても、FlyDataのサービスも、AppVadorのアドサーバ群もいずれもAWS上に構築されているため、RedshiftやS3まで含めたシステム全体を容易に拡張できるとしている。

 「RedshiftとFlyDataの組み合わせは、開発リソースをほとんど必要としません。ビッグデータをクエリだけで扱うことができるシンプルさや、コストなどを考えると、われわれにとっては唯一の選択肢と言えます。これで、開発リソースを広告配信技術に集中し、自社の開発スピードを向上させることができるようになりました。例えば、媒体社や広告主などによるカスタム案件にも、迅速に対応できるのです」(佐野氏)


(左)アップベイダー CEO/CTO 佐野宏英氏
(右)アップベイダー チーフサーバサイドエンジニア 今村彰秀氏

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