Salesforce.comは米国時間4月1日、Toopherの買収を発表した。Toopherはテキサス州のAustin Technology Incubatorから生まれた新興企業だ。Salesforce.comはこの買収で取得したモバイルベースの2要素認証関連技術によって、同社のアイデンティティ管理技術やアクセス制御技術を強化する考えだ。
Toopherはスマートフォンの位置情報取得機能を利用して2要素認証を提供する製品を販売していたが、買収発表の直後にその販売を中止した。既に味気ない見た目となっている同社のウェブサイトに残された声明文によると、同社の製品が提供していた機能はSalesforce.comのクラウドプラットフォームに組み込まれることになるという。なお、買収の条件は明らかにされていない。
Toopherの顧客にはLastPassやMailChimp、オクラホマ大学、テキサス大学が含まれている。
Salesforce.comはここ数年、アイデンティティ管理やアクセス管理に関するツールを強化してきている。同社は2014年10月、「Salesforce Winter '15」リリースで、「Login Flows」(ログインフロー)というオプションを新たに追加した。これによって開発者はログイン機能をカスタマイズし、付加的な業務プロセスを起動できるようになる。また同社はSaaSやモバイルアプリ、企業、その他のリソースを縦断して使用できる認証プロトコルの標準規格「OpenID Connect」の策定にも積極的に取り組んでいた。さらに同社は、インターネット標準化団体のIETFによる「OAuth」の策定作業にも積極的に参加していた。
米調査会社Gartnerのリサーチ担当バイスプレジデントMark Diodati氏は「Identity Management as a Service(IDaaS)、すなわちサービスとしてのアイデンティティ管理という市場の急速な成長を考えると、Toopherの保有する新しい認証機能を獲得するという今回の買収は理にかなっている」と述べるとともに、「こうした機能は『賭け金』だと捉えられるため、それらを手に入れることでSalesforce.comは競争力を高められるはずだ」と述べている。
Toopherのモデルでは、認証要求が新たなロケーションあるいは認識できないロケーションから到来した場合、当該ユーザーはToopherアプリからの通知として、その要求の詳細を受け取ることになる。その後、ユーザーは要求の承認や拒絶を指定できる。
Toopherはテキサス大学の博士課程の学生であるGrim氏と、同大学の経済学分野の非常勤教授陣の1人であるJosh Alexander氏によって2011年に設立された。Grim氏は最高技術責任者(CTO)、Alexander氏は最高経営責任者(CEO)を務める。同社はAlsop Louie Partnersから設立資金を得た。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。