荒川区は、小学校24校、中学校10校の区立学校全てにWindows 8.1タブレットPCを導入、現行の学習指導要領でのタブレットPCの効率的な活用に向け、授業や校外学習、校内行事等の学校教育で活用している。
導入されたタブレットPCは合計約9500台で、小学1~2年生は4人に1台、3~6年生は2人に1台、中学は1人1台の環境を整えたという。日本マイクロソフトが3月26日、ユーザー事例として公開した。
荒川区内の全小中学校では、Windows 8.1 タブレット PC が導入され、電子黒板との連動など、さまざまな授業でタブレットを活用している。
小学校では、ドリル学習でタッチ ペンを使って何度でも問題を繰り返して解いて着実に身につける学習や、インターネットを使った調べ学習に活用している。
区では、2006年度より学校図書館事業とともに教育の情報化事業を推進しており、2005年度に教育委員会と全教員および全普通教室をつなぐ「あらかわ教育ネットワーク(Aen)」を敷設、2010年度には小中学校全普通教室に電子黒板を導入し、2012年度にはデジタル教科書のネットワーク配信を開始するなどICT環境の整備を行ってきた。
さらに2013年4月からは、総務省のフューチャースクール推進事業や文部科学省の学びのイノベーション事業の成果を受け、タブレットPC導入モデル事業を小学校3校と中学校1校で展開。このモデル検証を受けて、2014年9月に区内の全区立学校への導入が行われた。
児童生徒が使う端末には、区が「21世紀型スキル」の習得を目標としていることから、教育用に特別にカスタマイズされたものではなく、社会で一般的に使われているタブレットPC、とりわけ社会でも一般的に使われているWindowsベースの製品が選ばれている。
教育の現場だけの使い方ではなく、社会の常識に学校の常識を近づけ、ICTのリテラシーを高めていくことを目指したとのこと。なお、モデル事業では「STYLISTIC Q702」、全校導入では堅牢性や防水、防塵性を備える「ARROWS Tab Q584」と、いずれも富士通のタブレットPCが採用された。
水泳の授業では、完全防水のタブレットを採用したことで、動画撮影機能を使い、水中の手足の動きを確認するなどユニークな活用も行われており、生徒たちの興味も非常に高まっている。
理科の授業では、高価な機材を使わなければならない実験でも、タブレット上の動画を活用することで、生徒の手もとで繰り返し確認することができる。
端末は、小学1~2年生では4時間に1時間、1日に1回はタブレットに触れるように配分した。小学3年生からは総合的な学習の時間とローマ字学習が始まることから、2時間に1時間の割合で中学生からは自分のツールとして活用できるように1人1台のタブレットを使えるようにしている。
端末の導入に際しては、操作に関する研修などを行わず、「習うより慣れろ」という方針で取り組んだ。導入前に各学校を回って、最初はタブレットを使った教育の考え方について説明、2回目はタブレットの機能を使った授業の例を体感してもらったほか、ICT支援員を各学校に1年間常駐させているのみ。実際の活用についても、学校や教員、児童生徒の自主性に任せている。
実際の授業などでは、ドリル学習でタッチペンを使って何度でも問題を繰り返して解いて着実に身につける学習や、インターネットを使った調べ学習などのほか、レポートや発表、またタブレットのカメラを授業内で利用するなど、さまざまな形で活用されている。
ソフトウェアとしては、Microsoft Office 2013とOfficeの活用支援ソフトウェアである「Dr.シンプラー 2013」、授業支援システムが中心で、その他に電子百科事典も用いられている。また、Windowsストアアプリの「見ん者」というアプリを体育の授業でフォームの比較に使うなどしているという。
ある中学校では、スマートフォンの是非についてのディベートを行い、否定派と肯定派の意見を聞いて、どちらの意見に賛成するかタブレットを使って投票するなど、リアルタイム学習に役立てている。
学校図書館でタブレットを使い、書籍とインターネットのどちらが調べ物に適しているかを考え、それぞれの良いところを理解するという学習を行った例。
荒川区では、このタブレットPCを、「21世紀型スキル」を育成するツールとして活用することを目指しているという。授業での活用においては、教員や児童生徒の発想に活用方法を任せることで荒川区の独自の授業スタイルを確立し、区内のみならず全国の自治体へも広めながら、先進的な教育体制を構築していくことに挑戦している。
荒川区 教育委員会事務局指導室 統括指導主事の駒﨑彰一氏は、以下のようにコメントしている。
「読み書き計算や学校図書館の書籍、新聞紙面などのアナログの教材と共に、デジタルのタブレットPCを活用することで、今まで以上にわかりやすい授業を推進し、メディアに対するリテラシーを高めることができるようになります。さらに、社会で即戦力となるグローバル人材を育てる"21世紀型スキル”を育成することを考えています。これらの資質や能力の育成やこれまでの各学校で蓄積したPC教室の財産を効果的に活用することを考えて、Windowsを選択しました。教師が自分の授業を見直し、タブレットPCをどのように活用するかを真剣に考えることで、授業の質の向上や児童生徒の学習意欲向上、コミュニケーションの活性化など、さまざまな効果が生まれています」