バルセロナの礼拝堂で動く強力スパコン「MareNostrum」、その活躍と未来--ARMベース「Mont-Blanc」も

Anna Solana (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2015-05-15 06:30

 バルセロナスーパーコンピューティングセンター(BSC)では、ビッグデータは新しい概念でも革新的な概念でもない。カタルーニャ工科大学のキャンパスにあるBSCは2005年以降、エネルギーから製薬まで、多様な分野の企業の膨大な量のデータを管理し、そうした企業のコスト削減と利益拡大を支援している。

 BSCのディレクターであるMateo Valero氏は米ZDNetに対し、同センターは創設以来、3000もの研究プロジェクトに参加してきたと語った。経済危機が依然続いているにもかかわらず、BSCはこの5年間で高度な技術を要する150の職を創出し、現在はコンピュータサイエンス、生命科学、地球科学、コンピュータアプリケーションの4分野で、計425人の専門家を雇用している。「リソースの獲得という点で、われわれは非常に有能だ」。Valero氏は笑顔でこう語った。

提供:BSC
MareNostromのあるバルセロナの礼拝堂
提供:BSC

 BSCは、スペイン政府の教育科学省、カタルーニャ州政府の教育と大学の担当部門、カタルーニャ工科大学が共同で運営している。研究センターでもあるが、スペインと欧州諸国の研究者が利用するインフラストラクチャとしての役割も果たす。

 BSCの最も重要な資産は、礼拝堂で120平方mのスペースに格納されている「MareNostrum」だ。これはIBMが構築したLinuxベースのスーパーコンピュータで、さまざまな大学や欧州の研究センターとファイバ接続されている。2004年にリリースされたとき、MareNostrumは世界で4番目、欧州では最も高性能なコンピュータだった。

 現在はLinpackのベンチマークで57位に入っている。同リストの1位は、33.86ペタフロップス(1秒間に1000兆回の浮動小数点演算を行うことを表す単位)の性能を持つ中国の「天河2号」だ。

 MareNostrumは数年前に完了したアップグレードによって、ピークパフォーマンスが1.1ペタフロップスまで向上した。3056のノードに4万8896基のIntel「Sandy Bridge」プロセッサ、42のノードに84基の「Xeon Phi 5110P」を搭載する。104.6テラバイト超のメインメモリと、2ペタバイト超の「General Paralle File System」(GPFS)ディスクストレージで構成されている。

 MareNostrumが停止することはほとんどない。電気料金は年間140万ユーロだ。BSCは無停電電源装置(UPS)で電気料金をさらに高くなるのは避けたいと考えていた。

 停電が発生しても、2~3時間は稼働できるが、それ以上は無理だ。MareNostrumは停電時の情報消失を最小限に抑えるため、定期的にチェックポイントを作成するシステムを備えている。大量のデータを使用するプロジェクトの場合、問題があるように思えるが、省エネルギーの方が重視されている。

 もっと大きな問題は、クラッシュするプロセッサがあることだと、Valero氏は述べた。そのため、BSCの研究者は、1基のプロセッサで障害が発生したときに別のプロセッサに切り替えて計算を継続する技術に取り組んでいる。そうすることで、何事もなかったかのように研究を続けることができる。幸い、このような状況が発生することはほとんどない。

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