フュージョンは1991年12月に、当時の時限立法「知識融合化法」の目的である「異なる分野の中小企業の知識を融合させ、既存の分野にとらわれない新しい事業を生み出すこと」を趣旨に設立された企業である。以来、ダイレクトマーケティングに関するサービスを提供し多くの顧客を抱えている。
日本郵便が主催する「全日本DM大賞」を8年連続で受賞し、世界最大のDM業界団体であるダイレクトマーケティング協会(DMA)から権威とされる国際エコー賞を受賞するなど、継続的に成果を出している。個人情報保護法改正のインパクトや同社の特徴、戦略などを同社代表取締役社長の佐々木卓也氏に聞いた。
個人情報保護法の改正がもたらすもの
代表取締役社長 佐々木 卓也氏
フュージョンは現在、小売業や製造業などにデータ分析やマーケティング戦略の策定、実施、効果検証をサービスとして提供している。最近は、3月に閣議決定された「個人情報保護法の改正案」に関する問い合わせが非常に多いという。
改正案はスマートフォンの位置情報などデータの利用を念頭に置いているが、個人を特定しうる「個人情報」とは別に、個人の趣味や嗜好、属性、購買履歴の情報などを指す「パーソナルデータ」を盛り込んでいる。同社の顧客企業は、このパーソナルデータをどう活用すればいいのか問い合わせることが多くなっているという。
個⼈情報保護法の改正のポイント(内閣官房提供)
佐々木氏は改正案の最も大きいポイントは「本人の許諾がなくてもパーソナルデータの利用や活用ができる点」と話す。一方、何がパーソナルデータなのか定義はいまだ曖昧であり、今後、線引きされていくだろうとの見方を示す。
フュージョン自体が考えるダイレクトマーケティングへのデータ活用法としては「消費者がどのような購買を実施しているかをより広く知り、その情報を基により顧客の嗜好に沿った施策を展開すること」を挙げている。
これまでは、ウェブ上で他業種の購買行動のデータを取得する代わりに自社での購買行動のデータを外部に提供する「パブリックDMP」があった。パブリックDMPでは、ウェブでの閲覧履歴やクッキーの情報がベースとなっている。現在議論中の個人情報 保護法の改正案が成立すれば、オフラインでの顧客の購買行動も明らかになる可能性がある。
法律改正により、データ連携が展開されるのは小売業だけではない。企業間のデータ交流への取り組みが始まっている。2014年に設立した異業種間のデータ連携を目指す団体「データエクスチェンジコンソーシアム」や、企業間でデータを共有し、より高度な情報活用を目指す、経産省の「データ駆動型(ドリブン)イノベーション創出戦略協議会」など各団体でデータ交流が推進されつつある。
「購買履歴などの自社データだけでは“客個人”を知るのは限界がある。特に嗜好品のマーケティングにデータを利用するには、ライフスタイルの多様化に対応するため、顧客を深く知る必要がある」(佐々木氏)
オフラインでの購買行動を異業種で共有する枠組みはすでにTカードやPonta、楽天 Rポイントで展開されている。これらのポイント連携は、ポイント加盟店が利用者のデータをカード経由で収集している。個人情報保護法が改正されれば収集したデータを連携させ、より多くのパーソナルデータを取得、加盟店同士で情報を共有できるようになる可能性があると説明する。