シマンテックが先ごろ開いたセキュリティ事業戦略の記者説明会で、「セキュリティ・ビッグデータの活用」を新たなビジネスとして展開していくことを強調した。いったい、どういうことか。
シマンテックが掲げた「セキュリティ・ビッグデータ」ビジネス
「シマンテックが蓄積してきたセキュリティ・ビッグデータを多くの顧客に活用してもらえるようにしていきたい」――米Symantecワールドワイドセールス担当エグゼクティブバイスプレジデントのAdrian Jones氏は、同社日本法人のシマンテックが先ごろ都内で開いたセキュリティ事業戦略の記者説明会でこう語った。
事業戦略の詳細な内容については関連記事を参照いただくとして、Jones氏が語った「セキュリティ・ビッグデータの活用をビジネスにする」という発想が非常に興味深かったので、ここで取り上げておきたい。
Jones氏が言う「セキュリティ・ビッグデータ」とは、Symantecがこれまで長年にわたってグローバルで蓄積してきたセキュリティ脅威に関する大量のデータのことである。その数は累計で3兆7000億件に上り、さらに最近では毎月1000億件以上のデータが新たに蓄積されているという。
Jones氏は、「Symantecはセキュリティ・ビッグデータを素早く解析する民間最大のインテリジェンスネットワークを保持している。これを多くの顧客に活用してもらえるような事業基盤を整備していきたい」と語った。
実は、Symantecは日本法人も含めて、セキュリティ・ビッグデータをそのまま提供するサービスを既に展開している。通信事業者やインターネットサービスプロバイダ(ISP)が自社のセキュリティサービスに取り入れたり、セキュリティオペレーションセンター(SOC)を自前で運営する大手企業が最新のデータを入手するために採用しているという。
大きく変化しそうなセキュリティベンダーのありよう
今回、Jones氏が語った新たな取り組みは、より多くの企業がセキュリティ・ビッグデータを活用できるように、「ビッグデータ解析の事業基盤を整備していくこと」を表明した点にある。
同氏はさらにこう続けた。
「Symantecは単にセキュリティ対策の製品を提供するたけでなく、顧客のニーズに応じた製品やサービスを展開している。新たな取り組みもその一環だ。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)時代を迎えて、セキュリティ・ビッグデータの解析情報を迅速に入手したいという顧客のニーズが高まっており、それに的確に応えていきたい」
こうしたセキュリティ・ビッグデータの活用は、Symantecと競合する米Trend Microや英Sophosなどのセキュリティベンダーも取り組み始めている。セキュリティベンダーにとっては、それぞれの製品やソリューションをさらに拡大するためにも、自らの“インテリジェンス”であるセキュリティ・ビッグデータの解析ノウハウそのものをビジネスにする知恵が求められているといえそうだ。
ひょっとしたら、セキュリティベンダーの将来の“収益源”は、その知恵がもたらすものになるのではないか。Jones氏の話を聞いてそんな印象も受けた。だとすると、セキュリティベンダーのありようは、今後大きく変わっていくことになりそうだ。
記者会見に臨む米Symantecワールドワイドセールス担当エグゼクティブバイスプレジデントのAdrian Jones氏(左)、同アジア太平洋日本地域セールス担当シニアバイスプレジデント Sanjay Rohatgi氏(中央)、シマンテック代表取締役社長の関谷剛氏