本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、米OracleのMark Hurd 最高経営責任者(CEO)と、シマンテックの浜田譲治 シニアマネージャの発言を紹介する。
米Oracle 最高経営責任者(CEO) Mark Hurd
「私の役目は全てのビジネスを成長させることで、その中身の比率などは気にしていない」 (米Oracle Mark Hurd CEO)
日本オラクルが4月9日と10日に都内で開催した「Oracle CloudWorld Tokyo 2015」で、米Oracle CEOのMark Hurd氏が来日して基調講演を行った。同氏の冒頭の発言は、講演後に開かれた記者会見で、クラウド事業の成長が収益構造にどう影響するかを聞いた筆者の質問に答えたものである。
Hurd氏は講演で、IT環境における総所有コスト(TCO)を削減し、ビジネスイノベーションをスピーディに進めていくためにも、企業は今後クラウドを積極的に取り入れていく必要があると強調した。同氏の講演内容の詳細は関連記事を参照いただくとして、ここでは記者会見での発言に注目したい。
同氏はまず、Oracleのクラウド事業の近況について、「ますます加速して成長しており、年間の売り上げ規模として20億ドルを超える勢いで推移している」と好調ぶりをアピール。同社の2015年度第3四半期(2014年12月~2015年2月)において、SaaSでは800社以上、PaaSでは400社以上の新規顧客を獲得したことも明らかにした。
ただ、同社が先頃発表した2015年度第3四半期の決算を見ると、SaaSとPaaSからなるパブリッククラウドサービスの売り上げ規模は、全売上高の4%程度にしかすぎない。同社のクラウド事業は、プライベートクラウドもしくはオンプレミスとのハイブリッド利用が大半を占めているのが現状だ。同社がパブリッククラウドサービスに本腰を入れ始めたのは昨年から。したがって、急成長しつつも全売上高における比率はまだ小さいわけだ。
そこで、筆者は会見の質疑応答で、そうした状況を踏まえたうえで、「今後パブリッククラウドサービスの売り上げ比率がどれくらいになると想定しているか。それが収益構造にどう影響するか」と聞いてみた。この質問の意図は、パブリッククラウドサービスの割合が増えると収益構造が変化し、業績への影響が少なからずあると見られることを、Hurd氏がどうとらえているか確かめたかったからだ。これに対し、同氏は次のように答えた。
「私の役目は全てのビジネスを成長させることにある。クラウドもその1つで、急成長分野と見込んで注力している。それぞれのビジネスを伸ばせば、当然ながら全体として成長し続けることができる。したがって、全体の中での個々のビジネスの比率やその推移がどうなるかといったことは気にしていない。クラウド事業も年間で20億ドルを超える売り上げ規模になる見通しがついた。その規模をいかに大きくするかが、私としては最も重要なことだ」