サイバーセキュリティ脅威の予測と修復を手がけるNopSecが、20年にわたって記録された6万5000件以上のセキュリティ脆弱性の分析結果を発表した。「2015 State of Vulnerability Risk Management」(2015年の脆弱性リスク管理の現状)と題されたNopSecの報告書を読むと、企業は重要なセキュリティ問題や既知の脆弱性を見過ごしており、問題の発生から修復までにあまりにも長い時間がかかっていることが分かる。
同報告書は、「National Vulnerability Database」(NVD)に記録された6万5000件以上のセキュリティ脆弱性を分析している。NVDは、米国政府が管理する、標準ベースの脆弱性管理データのリポジトリで、セキュリティに関連するソフトウェア脆弱性や設定ミス、製品名、深刻度などが含まれる。
20年間にわたって記録されたこのデータを分析することで、NopSecは金融から教育まで、さまざまな業界の組織が問題の認識から修復までに要した平均期間を割り出した。
NopSecはこの調査で、「共通脆弱性評価システム」(CVSS)ベースのスコアデータベース内の脆弱性記録、アクセス経路、脆弱性が発見されたプラットフォーム(CPE)に注目した。
20年分のデータを分析した結果、自社製品に関連する、報告済みの既知の脆弱性が最も多かったのは予想通りMicrosoftだった。「Windows」製品群が世界中で大量に導入されているため、Microsoftはあらゆる業界でトップベンダーである。しかし、企業で使われるアプリケーションの中で最も脆弱なのは、OracleやSunの「Java」、Adobeの「Adobe Reader」などの企業向けアプリケーションだ。
ヘルスケアや教育、クラウドテクノロジの業界では、オープンソーステクノロジが最も脆弱なプラットフォームの1つである。
NopSecによると、脆弱性の検知は「過去最高の水準」だが、それでも組織が既知のセキュリティ問題に対処するまでの平均期間は長すぎるという。平均すると、企業がセキュリティ問題を修復するのに要する期間は103日だ。NopSecの分析結果によると、問題を修復するのが最も早いのは、平均50日のクラウドプロバイダーで、97日のヘルスケアプロバイダーがそれに続く。
しかし、金融サービスや銀行業界、教育業界はセキュリティ問題の修復に平均で176日も要している。NopSecによると、金融企業の約3分の1は自社ネットワーク内の脆弱性への対応に驚くほど時間を要しており、セキュリティ脆弱性の修復に最大1年かかっているという。
さらに、NopSecの分析によると、1資産当たりに直面する脆弱性が最も多いのはクラウドプロバイダー(1資産当たりの脆弱性は平均18件)で、ほかのすべての業界の合計よりも多い。参考までに、金融サービスはわずか6件、ヘルスケア業界は3件、教育業界は2件だ。
「脆弱性にさらされるリスクがあるにもかかわらず、クラウドプロバイダーは既知のセキュリティ問題の修復に関して最も先進的な業界であり、特定された脆弱性の90%を30日以内に修復している」(同報告書)
さらに、アプリケーションのセキュリティ脆弱性はネットワーク脆弱性の9倍の速さで修復される。平均すると、アプリケーションの脆弱性は発見から3週間以内に修復される。一方、ネットワークの脆弱性は放置されることが多く、最大182日放置されることもある。これはいわゆるオープンチケットのワークフローのみを対象とする数字なので、スキャンからレポートまでの時間を基に考えると、脆弱性の修復までの時間はさらに何日、何週間、何カ月も長くなる可能性がある。
NopSecの最高技術責任者(CTO)で「NopSec Labs」を統括するMichelangelo Sidagni氏は次のように述べている。
組織は今も攻撃に対して非常に無防備な状態にある。企業は潜在的なリスクについて注意を喚起されているにもかかわらず、高額な被害を出すセキュリティ侵害の根本的な原因は依然としてシステムの脆弱性と設定ミスである。高度な攻撃が行われる今日の脅威環境では、問題を検知するだけでは不十分だ。組織は脅威の優先順位付けの改善に注力する必要がある。
提供:NopSec
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。