本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、サイボウズの青野慶久 代表取締役社長と、日本IBMの小島賢二 アプリケーションプラットフォーム・テクニカルセールス部長の発言を紹介する。
「企業のワークスタイル変革は、ツール、制度、風土の3要件に取り組む必要がある」 (サイボウズ 青野慶久 代表取締役社長)
サイボウズ 代表取締役社長 青野慶久氏
サイボウスとあらた監査法人が6月25日、共同で「競争優位を生み出す組織文化の築き方」をテーマにした一般向けセミナーを都内で開催した。青野氏の冒頭の発言は、その講演の中で、企業のワークスタイル変革に求められる要件について語ったものである。
サイボウズは、働き方の多様性を追求するなど人事・組織活性化施策において実績を持ち、「働きがいのある会社」として注目度が高まっている 。青野氏は講演で、その取り組みにおける考え方や具体的な内容について説明した。
同氏によると、「ツール」とは、クラウドや遠隔会議、ビジネスプロセスマネジメント(BPM)、セキュリティ、リアルなオフィス環境などを指す。「大事なのは、同じ仕事を進めるチームのメンバーが働く時間や場所にとらわれず、ツールを使って作業を進められること。そのために、情報共有だけでなくワークフローや活発にコミュニケーションできるツールが不可欠だ。しかもそうしたツールをどんどん使う習慣を根付かせていくことが肝要となる」と説く。
「制度」とは、在宅勤務、人事評価と給与、育児休暇、採用・退職などを指す。同社では、残業の有無や短時間勤務など働き方の自由な選択や、社内相対評価ではなく社外相対評価(すなわち市場性)の導入、最大6年の育児休暇、退社しても再入社できる「育自分休暇」、副業の自由化など、ユニークな制度を取り入れている。
その根底にあるのは「100人いれば100通りの人事制度があってよい」という人事ポリシーだ。このポリシーは、青野氏がこれまでの経営の葛藤の中から導いた「モチベーションとは一人ひとりの夢である」との理念に基づいている。
そして「風土」とは、多様性重視、個性の尊重、公明正大、率先垂範など、いわゆる「企業の価値観」を指す。同社では、多様性の基礎となる自立と議論の文化の浸透や人事制度策定プロセスのオープン化、ルールの目的の浸透と優先度の明示、福利厚生と生産性向上の両立を徹底することなどに注力している。